身に巻き付きクロは迫る。「お前はなんだ」と

ちょっとホラーな作品。
前後半にわけられていて、それぞれ主人公が違うけれど、前半の語りは自由帳に記載されていた内容で、後半は読んでいた医師に変わる。
この書き方が上手い。
親から必要な愛情を得られなかった薫は、自身を救うために彼の本心が、クロという女の子を生み出したと医師は考えたのだろう。
現実を直視することをさせても果たして本当に彼のためになるのかが医師にもわからないと思っている。
そんな医師の前に、クロが現れた。
二つ考えられる。
一つは、黒い何かは薫の本心ではなく、得体の知れない存在。
もう一つは、必要な愛情を得られずに育った人の本心の象徴として、愛情が不足したときに誰にでも現れる存在がクロという可能性。
物語の流れから考えると、おそらく前者と思われる。
薫と一緒にいたい、独占したいクロは、両親やおじいさんを殺したように、医師をも殺しに来たのだろう。