第7話 新しい命

さて、Hと別れた私のお腹はいよいよ臨月を迎えていました。


病院の検診、母親学級、いつも一人。

18歳のお腹の大きい私は周りからジロジロと視線が痛かったなぁ。

今でこそ若いママなんてたくさんいますが当時はまだまだ子どもが子どもを産むなんて!っていう時代。


ですが私にはそんな事は気にしていられない。

Hからの仕送りや養育費などの話も一切なく、

別れは私から切り出したものの、Hからしたら幸いだったのでしょうね。


ほぼ逃げられた同然で、うちの母も当面の間は自分が面倒を見ると言ってくれて私はそのまま実家でお世話になることに。


そしていよいよ陣痛がやってきました。

一人での出産はとても不安でした。

お腹はものすごく痛いのに子宮口は開かず

これよりももっと凄い陣痛がこなければ子宮口も開かず赤ちゃんも生まれないという先の見えない出産。

まるでブラックホールに巻き込まれたみたいな出産。


10時間くらいブラックホールで彷徨いながらも赤ちゃんは一筋の光に向かって無事に生まれてきてくれました。

元気な男の子。やっと会えた。

例えようのない感動をありがとう。

出産時の事は20年以上経った今も昨日の出来事のように鮮明に覚えています。


私似なのか、H似なのかもまだわからないけれど、

とてつもなく可愛い事だけは確か。←親バカ

私一人でもちゃんと育てていくと誓いました。



母も分娩室へやってきてくれましたが目に涙を浮かべ頑張ったねと声をかけてくれました。

だのに母の涙を見たら自分の涙が引けた私。笑


母は一応H宅へ子どもが生まれたと電話をしたそうですが、Hはもちろん顔を見せず。

病院へは、H母とHの妹がやってきましたが、

H母は開口一番。「子どもの血液型は?」



Hの子ではないと思っているのか。。。

子どもはHと同じ血液型だったので

「A型です」

答えるとH母は子どもを抱きもせず帰っていきました。


無事に子どもと自宅に帰って1ヶ月くらい経った頃H母からうちの母に電話があったそうです。

「出産費用を払ったのに私からお礼の連絡もない」と。


もちろん、お礼の連絡をしていない私は悪かったですね。

だけども。

H母にそこまで言われる筋合いあります?

H自身からは養育費すら貰っていないんですけども?


なんつぅ親子だ。

後日この親子エピソードは第6話でのH母からの襲撃以降Hとも友達の縁を切ったKくんとの間でネタになり盛り上がった事は言うまでもありません。



私はなんだか腑に落ちぬ悔しい思いをしながらもH母に手紙を書く事にしました。

「出産費用を出していただきありがとうございました。名前は○○と名付けました」と

子どもの写真も添えて。


それきり手紙の返事も電話もなくHに続き、H家とも完全に縁が切れました。









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まわりみち 林さくら @sakura1112

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