第2話
そんな私の前に現れたのは、彼より一回りくらい年上の男の人。
「その本僕が書いたんだ。読んでくれて有難う」と頭を下げた。
「私の方こそ、こんな素敵な本を書いて頂いてありがとうございます!とっても幸せなんです。そして、毎日追加して下さるので、この先もずっと楽しいと思います」
「それは、有難う。でも、明日の追加分で終わりにするんだ」
「どうして!?……絶対止めて下さい!私の恋が……」
私は、思わず声を荒げてしまった。
「書き始めた時は、終わりがない方がいいと思っていたけれど、僕だって命に限りがある、僕が書けなくなったら、僕の愛した物語は、追加されることもなく、どこにも到着出来ずに彷徨う電車みたいになるんだよ」
彼は、知っていたんだ……だからあんな歌を
……
確かに、そうかもしれない。書く人がいなくなった物語はどーなっちゃうの?彷徨っていつの間にか消えてしまうのかな?それでは、物語が可哀想。だとしたら、物語には、終わりがあった方がいいに決まってる。でも、終わってしまったら、私の恋も終わちゃう……考えている間に、男の人は、何処かへ行ってしまった。
物語を終わらせない為には、読まなければいいんだ!!
私が読まなければ、永遠に終わらないから。
だけど、出来なかった……
やっぱり物語には、終わりが必要なこと。
これが、最後のデートになる事を覚悟して、
ページを開いた。
カタン、コトン
カタン、コトン
私と彼は、電車の中に……🚞
地平線に太陽が沈む
ブルーとオレンジのグラデーションに
光輝く空と海
その景色を見つめながら
彼が歌ったのは、何処か寂しげだけど、
包み込まれるような温かい歌。♪♫♪
お別れの時がきた。
でも、サヨナラは言いたくない。
私は、静かに本を閉じた。
私の恋も幕を閉じた……
私はベンチに座り、泣いていた。
本当にこれで良かったの?
うん、多分。涙が溢れて止まらなかった。
私をみて心配そうな顔した人達が、私の前を通り過ぎていく。
そして、……誰もいなくなった……
私を慰めるかのように、
突然、ヒューッ!と風が吹く。
そして、手にしていた本のページが
パラパラッと開いた。
顔をあげると
優しい瞳が私を見つめていた。
終わったはずじゃなかったの?
そうか!終わってしまった物語。
でも、ページを開けば、いつだって、何度でも、会えるんだね。
終わった物語の後には、想いだけが残った。
それは、とっても不思議な物語。
私は、その意味に、もうとっくに気付いてる。
たとえ物語が終わったとしても、想いは心に刻まれていくの、そして、それは私にとって、ずっと望んでいた純愛物語なんだってこと。
───────────────つづく─
終わりのない物語 maris @marimeron
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