終わりのない物語

maris

第1話

手にした時から続いていく物語、『終わりのない物語』


ページを開く。📖

私のいる世界が変わった。


カタン、コトン

カタン、コトン🚞


私がいたのは、JR呉線の電車の中。

レトロな電車に乗って、窓から見える景色を

眺めていた。


「此処に座っていいですか?」

「ええ、どーぞ」

隣に座ったのは、優しい眼差しをした彼だった。

彼もまた外の景色を見ていた。


忠海駅に止まり、そして、発車する。🚞

カタン、コトン

カタン、コトン🛤️

左に見える新緑輝く黒滝山を過ぎ、

カーブを曲がって顔を出したのは、

まるでダイヤモンドをちりばめたように

煌めく海。

キラ、キラと一面の銀世界が広がっていた。


ゆらり、ゆらり

心地良く揺れる。

何だか、とっても気分がいい。

すると、突然隣の彼が、で、歌いだした。

揺れる電車のリズムに合わせたような優しい歌。♫

時が経つのを忘れ聴いていた私は、

その歌が終わると、本を閉じた。

彼も消え、私は自分の部屋のベッドにいた。




そして、私の恋が始まった。



毎日、ページを開く。

そして、私と彼は電車の中。🚞

カタン、コトン

ゆらり、ゆらり

そして、彼が歌うのは、くすぐったいような、ドキドキしてしまうような恋の歌♬

降り注ぐ想いのシャワーを浴びて

とっても、とっても気持ちいい。



夢を見ているような、とても素敵な時間。

終わりのない物語は、最初は薄いノートだったのに、毎日追加され、今ではすっかり本らしい姿を呈していた。



カタン、コトン

ゆらり、ゆらり🛤️

私は、毎日、嬉しくて仕方がない。

永遠に続く終わりのない物語

ずっと、ずっと彼と電車の中🚞

そして、彼は歌い

幸せを届けてくれるの🕊️

この先もずっーとね

と、思っていた……



空が夕焼けで、ピンク色に染まった日

彼は、泣きたくなるような切ない歌を歌った♩♩♩

悲しくなった私は、本を閉じた。



───私は、駅のベンチに座っていた。

目の前には、いっぱい涙を抱え込んだような灰色の雲が浮かんでいた。☁️☁️☁️☁️☁️


何故そんな歌を?

涙が頬を伝い私の握り拳の上に落ちる。💧

すると、こらえきれなくなったのか雲も一緒に泣き出した。


ポトン、

ポトン


悲しい音が聴こえた。



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