推しは推せるときに推せ、推せなくなっても推せ

 突然の死から一転、大事な〝推し〟の一番身近なところに転生した男のお話。

 勢いというか、諸々の設定のパワフルさがとんでもない!
 ネット小説やSNSなどのジャーゴンというか、テンプレート化した概念や設定をバンバン投げ込んできて、かったるい説明一切なしで「わからせ」に来るパワーの心地よさ。
 まともに考えるととんでもないことが起こっているというか、具体的に何がどうなってるのかわからない部分があるはずなのに、感覚的には何もつっかえることなく読めちゃうのがものすごい。

 内容は本当に、無機物に生まれ変わってまで大事な〝推し〟のファンであり続ける男の、誰にも知られることのない独白です。
 いろいろコミカルだったり残念だったり、ときには理不尽な辛酸を舐めさせられながらも、でもあくまで純粋に〝推し〟を思うところがなんだか憎めないというか、ほっこりしてしまうのがもう本当に好き。

 いつの間にかすっかり同調させられてました。
 気づけば一緒になって〝推し〟を応援している……顔も見たことないのに……。

 独特のノリながらも、はちゃめちゃな展開が楽しいコメディ作品でした。