第15話

俺は今スキル判定をするための教会に行く為の馬車の中にいる。スキル判定は月末に行われる。昔は年末に1度全ての5歳を集めて、一気にスキル判定を行っていたが、今は子供が多くなりすぎて1ヶ月毎になっている。今や子供が多くなりすぎて、王都の中に何十個も教会が建てられている。


俺はこの日をどれだけ楽しみにしていたことか。俺のスキルはなんだろうかとずっと考えていたり、自身のスキルのことを考えて寝れなかったこともあった。


最高の気分だ...


俺のスキルが、俗に言うハズレスキルでも許せる。


鼻歌を歌いながら窓の外を見る。


うーん、今日はとてもいい天気だ。空にひとつの雲もない。


「ハハハ、嬉しそうじゃないか」


俺と一緒に馬車に乗っている父さんから、暖かい目で見られる。


「超嬉しいっ!」

「アレスがそこまで喜んでいる姿を見るのは初めてだよ」



馬車に揺られながらしばらくして教会に着く。


かなり大きい教会だ。外観も綺麗で金がかけられているのが分かる。さすが貴族街の教会だ。


教会には2つの種類があり、平民街の教会、貴族街の教会がある。平民は平民街の教会、貴族は貴族街の教会に行くことが義務付けられている。平民と貴族を混ぜると様々なトラブルが起きるので分けられている。


「さ、入るよ」


父さんと一緒に教会の中に入る。俺は父さんと別れ、スキル判定の部屋に入る。


スキル判定のための部屋には長椅子に座った子供達が並んでいる。俺は順番どおりに左の窓際にある長椅子の端に座る。周りの子達はずっとソワソワしながら近くの子と喋っている。


俺の隣は誰も居ないため暇だ。暇つぶしのために、前の席の子と喋ろうかと考えていると、扉を開ける音がした。


やっと隣の人が来た...


隣に人が座り、話しかけようとすると。


「こんにちは」


先に言われちゃったよ...


隣の子を見ようと首を隣に向けるとそこには超美幼女がいた。


宝石のように輝く赤い目に、光をは浴びて輝く長い金髪。ゾッとする程に綺麗な肌。整いすぎた顔立ち。


俺の妹達に匹敵か、下手したらそれ以上の美人だ。


「ん?あぁ、こんにちは」

「私の名前はアリス、アリス・ヴァイオレットよ、アリスって呼んでね、あなたの名前は?」


自己紹介の速度も早すぎだろ。


こいつ、コミュ強か...?


「俺はアレス・アルゴンだ、よろしく、俺の事もアレスって呼んでくれ」


まだスキル判定が始まるまで時間がありそうだから暇つぶしとしては丁度いいだろう。


「ねぇ、アレスってあの有名なアルゴン家よね?噂じゃ色々とすごいって言われてるけど、実際はどんな感じなの?」

「どんな感じって聞かれても普通なんだが...」


アルゴン家はこの国じゃ有名らしいから色々と噂がある。

例えば、100人の女性と結婚した男や、兄弟喧嘩で山を何個も吹き飛ばした双子、有名な湖の水を飲み干したバカなど、枚挙に上げればキリがないほどの変な噂がある。


まぁ実際本当らしいから噂ではないんだけど


実際父さんも何かしでかしたらしいが、詳しくは教えて貰えない。知られたら本気で死にそうなほど、恥ずかしいことなのだそうだ。


「アリスの家も有名だろ。ヴァイオレット家っていえば、この国じゃ有数の武家じゃないか」

「まぁ、そうなんだけどね...ちょっと窮屈なのよ。こんなこと言える立場じゃないんだけど...」

「へぇ...家じゃどんなことしてるんだ?」

「基本は訓練と勉強よ、うちは文武両道だから」


この歳から勉強とか早すぎだろ。俺だったら死ぬ。


「にしてもあなた...強すぎじゃない?」

「この歳にしては強い自信はある」


2歳の頃から訓練してるからな、同年代より強いのは当たり前だ。俺より強い奴いたら普通にビビる。


「アリスも強いだろ」

「あら、分かる?」

「5歳にしては有り得ないぐらい強いな」

「あなたに言われても皮肉にしか聞こえないわね」




アリスと楽しく駄弁っていると、扉が開く音がする。


今度は2人の足音が聞こえる。アリスはその2人の方に目を向けると、すぐさま立ち上がった。


「ご機嫌麗しゅう、エンデ王子、プリシラ王女。」


アリスは惚れ惚れするほど美しいカーテシーを、部屋に入ってきた2人に向ける。


「そ、そんな畏まらなくていいよ」


そう言いながらワタワタしてるのは、多分プリシラ王女と呼ばれていた女の子。綺麗なマリンブルーの髪と目をアリスのような色気ある綺麗な顔ではなく、可愛らしい容姿をしている美幼女だ。




アリスや俺の妹達にも匹敵するレベルで美人だ。


...この世界はこのレベルの顔のヤツがゴロゴロいるのか?


「この場で僕達の身分は気にしないでくれると嬉しいな」


プリシラ王女の隣に居る男の子が、爽やかな笑顔で俺達に喋りかける。こっちはエンデ王子かな?


エンデ王子は金髪碧眼のイケメンだ。The王子みたいな顔をしている。こいつが王子じゃなかったら誰が王子ってレベルだ。


「敬語は使わないでくれると嬉しいなぁ。あと、呼び捨てもお願いしていい?同世代の人達とフランクな関係になるのが楽しみだったの。」


プリシラ王女が恥ずかしそうに頼んでくる。


「それでは、失礼して...よろしくプリシラ。」

「...っ!、よろしく!!えーっと...」

「アリス・ヴァイオレットよ」

「よろしく!アリス!!」


2人はもう既に仲良くなったのか、隣同士で喋っている。出会って1分も経っていないのに親友のように見える。これは2人のコミュ力がずば抜けてるからか?


女の子同士で仲良くしているから、男同士でも仲良くしてみるか。


そう思ってると先に話しかけられた。


「やぁ、僕はエンデ。君の名前は?」

「アレス・アルゴンだ。よろしく頼む。」

「あぁ!よろしく頼むよ!僕もプリシラと同じで同年代の子と友達になるのが楽しみだったんだ。」


エンデは嬉しそうにしている。微笑ましくていいね。


「ねぇ、アリスちゃんとアレス君はどんなスキルが当たったら嬉しい?」

「うーん...私はなんでもいいわね。戦闘スキルだったらちょっと嬉しいぐらいね。」

「俺は強くなれるスキルならなんでもいいな。」


最強を目指すなら強い戦闘スキルがあって損はないからな。


「プリシラとエンデはどんなスキルが欲しいの?」

「私は魔法に関係しているスキルなら嬉しいな。...実は私スキルより適正属性を測る方が楽しみだったの。5歳になったら魔力が解放されて、魔法が使えるからね!」


プリシラは興奮しているのかちょっと早口だ。確かにこの歳の子は、スキルより魔法の方が魅力的に見えるかもしれないな。


「・・・僕は特に欲しいスキルないかな。本当になんでもいいね。」


おーい、男ならもっとロマンもてよー。


「...なんだい?そのちょっと小馬鹿にしたような顔。」

「小馬鹿にしてるからな。」


エンデは俺が煽るとこめかみをヒクヒクさせながら、爽やかフェイスを保っている。こいつ器用だな。


「じゃ、じゃあ聞くけど君はなんで強くなりたいんだい?」

「そりゃあ最強になりたいからだお前も男なら、もっと欲張って生きろよ。」


俺の言葉を聞いたエンデは唖然とした表情で俺を見ている。


「さ、最強って...ぷッ、あははっ!アレン、面白いね君!そんな真っ直ぐな目でそんな事言うなんて。...少し羨ましいよ。」


なんだ?急に驚いたり笑ったり落ち込んだり、忙しいやつだな。


「へぇー、アレン君の夢って最強になるってこと?」

「可笑しいか?」

「ううん。かっこいいと思うよ!」

「ふふん、そうでしょ。」

「なんでアリスが喜ぶんだよ。」




俺達が喋っている間に、今月の誕生日の人達が揃ったようで、そろそろ始まるような雰囲気がする。


「えー、ゴホン。皆も揃ったようなので、では始めるか。」


女神像の前に佇んでいた老人が、閉じていた口を開く。


ようやく始まるな。スキルも気になるし適正魔法も気になる。楽しみだなぁ。

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最強バカ×神ゲー転生 マーラ様 @taketo0710

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