とある水の星で 🌼
上月くるを
とある水の星で 🌼
しずかな住宅街の、とある垣根の外に、ムラサキツユクサの大きな株があります。
日当たりがいいので付近に先駆けて咲き、犬や人の目を長く楽しませてくれます。
🐕
そんな穏やかな営みがつづいた日。
人知れずふたつの花が散りました。
ひとつは、太陽に近い、朗らかなポジションにいた、ひときわ大粒で華やかな。
ひとつは、ほかの花に押しつぶされそうな下の方にひっそり咲いた、おさなの。
簡単な漢字をわざと読み違える(笑)ご愛嬌でムラサキツユクサ界に君臨した。
諸行無常の意味も知らず、ただ怯えて泣きじゃくるだけのために生まれて来た。
💧
あかつき、のこされた花たちは透明な丸い露をひと粒ずつ花芯にのせています。
きのう飛んだ命への、そして、かつて無念を抱えて星になった命への鎮魂の滴。
散歩にやって来た犬と人は、ひときわ華やかな花が散ったことは惜しみました。
でも、茂る枝葉のかげにひっそりと咲き出た、おさなの散華には気づきません。
どんな命の重みにも、かけえがえのなさにも、寸分の差もないはずなのに……。
ムラサキツユクサの花たちの濃紫が凛然と見えるのは気のせいではありません。
🌠
いまなお語り継がれる
とある小さな水の星の
小さな小さな物語……。
とある水の星で 🌼 上月くるを @kurutan
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます