「犯人はワシじゃよ」

 取調室にて、自分の犯した罪を自供する〝博士〟と、それを聞く刑事のお話。

 わりとシリアスな様子で始まっているはずなのに、どことなく緩い空気が漂う現代ものミステリです。
 実際、コメディ的なお話というか、小ネタ的なショートショートのような趣があります。
 分量も短く、気軽にサクッと読めちゃう作品。

 なにしろ主人公、犯罪を自首しているこの〝博士〟が、なんと結構なおじいちゃん。
 一人称が「ワシ」だし、語尾に「じゃ」がつくし、言ってることもなんだか強引というか変というか……という、この露骨な「信用ならなさ加減」に独特の味わいがあります。

 とはいえ、そこはやっぱりミステリ作品、最後にはしっかり真相が明かされますのでご安心を。
 ゆるい空気と、でもほんのり寂しいところが好きなお話でした。