死とはそもそもが理不尽なものではあるけれど

 体が弱く療養中のお兄さんと、その彼を慕う幼なじみの海軍さんのお話。

 昭和初期ごろの日本を舞台にしたボーイズラブ、あるいは男性ふたりの関係性の物語です。
 タグにある通りBLには違いないものの、それはそれとしてはっきりそのような描写があるわけでもないタイプのそれなので、普段BLを読まない方でも楽しめるお話ではないかと思います。

 内容はこう、とにかくもう、あまりにも切なくて……。
 きっと現代よりはまだずっと、死の影が身近であったろう時代の物語。
 確かに悲劇には違いないんですけど、でもそれはこうして本作を読んでいる私たちが思うより、きっと「そこらに普通にあり得たであろう悲劇」だとも思うのです。

 誰も悪くない、という以上に、本当に誰のせいにもできない感じというか……。
 「なぜ彼らがこんな目に」という、その気持ちの持って行き場のなさが本当に好きです。
 だってこんなのどうしようもない……つらい……。

 そもそもにして、「人の死」というものそれ自体が、すでにして理不尽なものではあるのですけれど。
 でもその事実を改めて突きつけられたような、そんな気持ちにさせてくれる作品でした。

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