第2話 ambivalent(中)


 世に珍しいエメラルドの髪、いや珍しいのはそのエメラルドの髪がとても似合っているというところだろうか。そしてそこに二つある赤目、それらの色のコントラストも重なってより美しく見える少女。になぜか俺はお姫様抱っこされているわけだが......


 「ごめんなさぃ、これっってぇどういう......」


少女は不思議そうに俺を見つめてくる。しまったな、こんなところでコミュニケーション能力のなさを嘆くことになるとは思いもしていなかった。俺がもじもじしていると少女は肩をプルプルと震わせ出した。笑いをこらえているのが伝わってくる、文字通り直接的に。震えすぎてお姫様抱っこされている俺までも震えだしてきたようだ。



 「tっあはははっはっは、いや、やばいね。 いまどき、まだコミュ障っていたんだ! ふぅーっっふははっはっはっっはぁぁ~~。 いや、ごめんね笑っちゃって」

 「ほんとに失礼な奴だ。 初対面でここまで人を笑える奴には久しぶりにあった」



 まあ、そもそも外に出るのさえ久方ぶりなわけだが。



 「いやぁ、ほんとにごめんね。 ......でもね、こっちも君を助けてあげたんだから、お、お礼というか? もう少し感謝してくれてもいいと思うけどねぇ」

 「ん?」

 「んっ」



 そういって彼女があごで指した方向では電動自転車はぺちゃんこにプレスされ、前方で急ブレーキした車と、後方から来ていた様子の車が追突事故を起こしていた。 二つの車の運転手は車から出て、車道でもめているようだ。



 「これだけ大きな事故になったからにはそろそろ奴らがくるね。君も怪我してるみたいだし――いったん私についてきてもらうね」



少女は真面目な顔をしてそういうと、急に走り出した。俺をお姫様抱っこしたままで。


 「いや、いっかい降ろせぇぇぇぇーーーー」

――――








◇◆◇◆◇












 少女が走ること5分ほど、俺たちは大学付属の施設内にやってきていた。そしてやっと降ろしてもらえた。


「ここって確か......研究室か」

「お! よくわかったね! 最近は分野に境目がなくなって、統合研究室って呼ばれているよって、君もしかしてここの学生さん!?」


「まぁ、最近は来てなかったけどそうだっていうか、もしかして年上さん!?」


 あれだけの速度で走っていて息切れや疲れさえ見えないこと、年上であることには驚いたが、研究室配属されていると考えると明らかに俺よりは年上になる。確かに出るところは出てるというか。



「......女性に歳はきいちゃダメってよく聞かないのかい?」

「いえ?」

「ふぅ~、これだからコミュ障は。 あ、タメのままでいいからね?」



 まじそれいつまで引きずるんだよ。まあ、自分に都合の悪いことは聞かないことにしておこう。久しぶりの講義までまだ時間もあることなので、『統合研究室』を少しだけ案内してもらうことになった。やや強引な勧誘の末だということは言わないでおこう。おっと口が滑った。

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マースマグ Russi @googru

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