はちゃめちゃな中にビシッと通った物語の軸

 暇を持て余すあまり、友人と一緒に銀行強盗狩りをする人のお話。

 タグにある「シュール」「マジックリアリズム」の語の通り、あらすじを要約するのがなかなか難しい物語です。
 紹介文の登場人物一覧を見ればわかる通り、いろいろはちゃめちゃすぎるお話。

 設定や出来事といった面においては、本当に何もかもしっちゃかめっちゃか……なのですけど。
 しかし物語だけがシャキッと筋が通っているのが不思議というか、そこが本当に魅力的でした。

 主人公の中の葛藤とか、悩みとか、いろいろ考えた末の答えとかがとても好き。
 わけのわからない部分は山ほどありながら、でも一番大事なトロの部分だけ理解させられちゃったみたいな感覚です。

 特に最後の結びなんかもう本当に綺麗で……。
 とてもぶっ飛んだものを読まされた、という実感と同時に、ものすごく澄み切った読後感があるのだからたまりません。こんなの初めて。

 なかなか説明が難しく、とにかく読んでみてとしか言えません。
 何はなくとも物語だけは確かにある作品でした。