あなたに彼の物語を見届けてほしい

 英雄譚の主人公のように正々堂々戦ったりはしない。
 
 人倫にもとる行為をしないどころか人でさえない。正義などではない。人類は確かにゴブリンにとって厄災の権化で、罪なき同胞を殺戮する者だ。
 だがそれはゴブリンから見た人間だ。人もゴブリンも誰もが自分の大切なもののためにだれかを傷つけている。命を踏みにじっている。

 彼は迷い、苦しみそれでも憎しみを捨てられない。挫けて、敗れて、倒れて。その度に立ち上がる。 
 何を奪われても彼は止まれない。人類を絶滅させるまで、彼は始められないから。生きてもいいと自分を許せないから。奪われた同胞の、相棒の命に意味がなくなってしまうから。
 
 これは人に傷つけられ、踏みにじられたゴブリンの復讐譚。

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