ゴブリンです。今日も人間を捧げます。
沖唄
第一章 緑で弱くて矮小なそれ
第1話 プロローグ
森の中、一匹の鹿が草の芽を食んでいた。
ふと、何かに気づいたかのように周りに目を向けるが気のせいだと思ったのか食事を再開した。
その様子を草の影から見つめる三匹の魔物がいた。
身長は1メートルを超える程度、緑の身体、肋は浮き出ていて醜い顔をもつ、この大陸では害獣扱いされている魔物、ゴブリンだ。
全員が粗末な腰布を巻き、棍棒を手にしていた。
残りの一匹は冷静に鹿を観察している。
リーダーらしきゴブリンが手を上げて合図すると、一匹は回り込もうと移動を開始したが、もう一匹が草影から出て獲物へと飛び出して行った。
回り込もうとしていたゴブリンもそれにつられて鹿へと方向を変えた。
「あっ、バカ」
リーダーは思わず悪態を吐いた。
ゴブリンに気付いた鹿は既に背を向けて逃げ出している。
もちろんゴブリンが追いつける速度ではない。
棍棒を捨て腕に巻き付けていた道具を外し、右手に構えて投げた。
それは紐の両端に石を結んだ極めて簡易な狩猟道具だった。
「キューーン!」
リーダーも慣れていないのか照準は鹿の中心から微妙に外れていたが、うまく足に絡まった。
後ろ足2本が固定されてしまった鹿は倒れてしまい足が泳ぐように宙を蹴る。
それを見て二匹のゴブリンは跳ね回って喜び、ゴブリンのリーダー……つまり俺は汗を拭った。
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