荻生徂徠『政談』を巡るブレスト

中西 魯な(rona736)

第1話 解題(『政談』について)

 「本書の著者は蘐園学派の総帥荻生徂徠。通称は惣右衛門。字は茂卿。徂徠又は蘐園と号す。初め古学を排斥せるも、後自ら一種の復古学を説き、特に経世済民の実際的運用を唱道した。徂徠のこの学説は当時の訓詁に没頭せる学者をして、一応実学への関心を持しむるに与って力があった。彼は又柳沢吉保の知遇を得て、それより幕府にしばしば重要な政治上の献策を上申した。本書も彼が享保年間に幕府の諮問に答えて内密に上程したもので、徂徠一流の経済理論が盛られ、近世社会経済史料として最も重視すべきものの一とされている。全四巻を通じて、彼の立場は当に武士階級のそれであり、其の点やはり幕府の御用儒者としての徂徠の面目が知られる。彼は享保十三年正月、六十三歳で没した。その数多き門弟中、彼の経済学を祖述したのは太宰春台其の人であった。」


 雄山閣文庫『校訂 政談』荻生徂徠(北島正元校訂) 解題部分



 解題を引用しています。


 蘐園というのは、「蘐」というのは「茅(かや)」のことだそうで、東京の茅場町に塾を開いたことから、蘐園社中という塾の仲間ができ、それに伴って、蘐園学派というものが形成されたとのことです。


 荻生徂徠の弟子のうち、経済学などの系統を継いだのが文中にも見える太宰春台であったのに対し、服部南郭というお弟子さんが、確か『唐詩選』の校訂出版をしたり、漢詩などで有名だったはずです。のちには蘐園学派というのは服部南郭を中心に漢詩の学派として重きを成すようになり、名声を轟かすことになったとのことです。


 ただこれから取り上げるのはこの蘐園学派の総帥、荻生徂徠という人の政治献策である『政談』というものです。政治の論争になります。そしてこの『政談』の分析というよりは、これをもとに当時の世を想像したり、現在につながるブレストをしたりする、まあ、エッセイのようなものになります。


どこまでできるかわかりませんが…。


 引用しているのは、国立国会図書館のデジタルライブラリーに所収されている、雄山閣文庫の『校訂 政談』(北島正元校訂)の文章に基本なります。岩波文庫にも収められており、東洋文庫のものが権威があるかとも思ったのですが、今回は版権などを慮って、この文庫のものを使わせていただきます。しかしこの引用も、問題点等あればご指摘ください。


「古学を排斥した」と文中にあります。古学とは儒学のうち、宋の朱子が中心となって形成した朱子学に対して、独自の発展をしようとした学派だったはずで、伊藤仁斎なども古学の巨人だったはずです。


 解題では、経済に関する献策として、また当時の社会状況を知る史料としても重要な文献とされています。


 今回はどこまで儒教のエッセンスを取り入れるのかわかりませんが、朱子学とは違う、日本独自の古学派の儒学も影響しているという事なので、どういう感じになるのかまだわからないのですが、とりあえず取り組んでみたいと思います。


 いつものように、いつぶん投げるかわかりませんが、お付き合い願えれば幸いです。


(令和4年7月3日)

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