まるであの愛が嘘だったみたいになっちゃうから

 呪術師の力を借りて、亡くなった妻をこの世にとどめ続ける人のお話。

 えぐみたっぷりのホラーです。
 いやもう、本当にこう……読み終えてしばらく脱力しちゃった……。

 どんどん朽ちていく死体の描写、その生々しさだけでも十分に強烈なのですけれど、でも本作の本領はやはり主人公の懊悩そのもの。
 彼の妻がなぜ亡くなり、またどういった経緯でそれをこの世にとどめる決断をしたのか、その正確なところまではわかりません。
 ただ、そういう選択が可能な世界において、それはうっすらわかってしまうところがあるというか、なんなら「自分も同じことをするかもしれない」と思わせられちゃうところが本当にえぐい。

 その結果として降りかかる当然の帰結、半ば朽ちかけの死体との同居生活。
 半年後のその時点から物語が始まっているのがもう本当に……。

 愛した人が徐々に別のものへと、それも共に生活するのが困難な何かへと変貌していく、という現実。
 加えて、それを「愛しているから」という理由で引き止めてしまったこと。

 それだけならまだ、どうにか致命傷で済んだのですけれど。
 最後の最後、さらに強烈なもう一押しを食らって、本当にしばらく動けなくなりました。

 どうしても現実の地獄を投影してみたり、またそれ以上の地獄を見せつけられたり。
 とにかく凶悪な作品でした。大好き。