第2話 偶然

ねえ、正直なところ運命って信じてる?


私はリンゴジュースの紙パックに突き立てたストローを咥えながら

誰ともなく胸の内に問いをこぼした。


いま、私は学校の中庭で昼食とっている

ところだ。あの日から1週間がたって、

少しだけどあの時に起きたことを

俯瞰できるくらいに心に余裕が出てきた。

到底信じられはしない。あんな怖い思いをしたのが夢か何かだなんて。



吸い上げた甘い液体には、いったいどれくらいの果汁が含まれているのか、

それはただ甘味を楽しみたい私にとっては至極どうでもいいことで、意識しもしないことだが

その果汁の量に着目する人がいるとすれば、ひどく損をした気分になることだろう。人間はなにか一点に価値や重要性をつけてしまうことでその視野を狭めてしまいがちだ。

目に見える些細なところにも重要な要素は多分に含まれている。


例えば、あの時なぜ町が静まり返っていたのはなぜか。

あの時私は、彼のバイクの音とあの甲高い摩擦音。それ以外には自分のバックを落とした時以外無音の状態だった。それを今さらになっておかしく思うんだ。

あの時は、あの化け物についてしか考えていなかったから、仕方がないのかもしれないけど。


ストローを口から離し、左手に持っていたパンをかじる。

まったく困ったな。運命の出会いをしたっていうのに。

にしても......あの告白はないな。素敵な彼にいくら動揺してたとはいえ。

今この瞬間も瞼を閉じれば鮮明に思い出せる。

ヘルメットをかぶっていたけど、穏やかな声からわかる大人の雰囲気。

比較的背の高い私よりも長身の美丈夫。それに、あんな怪物を倒しちゃう。

私のヒーローだ。



そろそろ教室に戻ろう。



その時だった。



ああ、またあの時の音がした。










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背筋が凍る。


あの音がしたってことは!

ハッとして上を見上げる、が前回とは違い空は青いままだし、

恐ろしい怪物もいない


ほっとして手に持っていた空の紙パックが落ちた


.........音が、しない



おかしい。やっぱりおかしい、音がしない?

そういえば風もない。日光に暖かさを感じない。

普段と変わらない風景のはずなのに、どこか冷たい雰囲気だ...



あたりを見回して違和感を感じていると


「サワラギ キョウカ、カクニン。」



そんな機械音声とともに何もなかった空間から現れたのは大きな人型の機械だった













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