恋愛性熱中症

@ramia294

第1話

 今年の夏は、あわてんぼう。

 いつもより、早く。

 僕たちの前に、到着しました。


 サクランボの季節。

 梅雨前線。

 今年は、ゆっくり出来ません。

 あわてんぼうの夏に追いたてられて、名残惜しそうに、去っていきました。


 長くて暑い、今年の夏に。

 電力会社は、ピリピリ。

 

 電力。

 今年は、足りますか?

 エアコン、扇風機。

 冷蔵庫に、テレビ。


 夏は、電気も大忙し。

 みんなで、節電。

 暑い、暑い、夏。

 乗り切りましょう。


 暑い?暑い?

 熱い?熱い?


 みなさん、熱から身を守りましょう。


 僕の学校。

 熱中症から、身を守るため、連絡が回って来ました。

 生徒会からの連絡。


 みなさんの熱い、熱い、恋。

 今年の夏は、自粛して下さい。

 節電のため。

 熱中症予防のため。

 熱い恋。

 今年は、自粛です。

 みなさんの命が、何より大切。


 どうしよう?

 男子生徒のみなさん。


 どうしましょう?

 女子生徒のみなさん。


 みなさんの青き春。

 太陽の季節。

 真ん中の夏。

 恋の自粛になりました。


 僕は、困りました?

 その時。

 僕は、人生初めての恋。

 経験していました。

 

 確かに。

 この胸は、最近。

 熱いです。

 夏に、危険な熱中症。

 恋だって熱く。

 危険です。

 恋が、引き起こす。

 あなたの、僕の、僕たちの

 恋愛性熱中症。


 生徒会。

 生徒会長。

 頭が、良く。

 性格も良く。

 可愛い。

 スタイルだって良く。

 その声は、僕の心を奪い。


 風に、長い髪が揺れると、僕の心も。

 早瀬の木の葉。

 


 僕の恋。

 僕の心を奪ったのは、生徒会長。

 彼女からの要請。

 暑さ対策。

 僕たちの恋。

 熱い、熱い、恋。

 自粛しましょう。


 恋愛性熱中症。

 みんなで防ぎましょう。

 今年の夏は、これで安全。


 でも…。


 僕の胸の、熱い、熱い、恋心。

 プールで、泳いでも冷めてくれません。

 海で、ビーチボールに恋を打ち明け…。

 やっぱり、冷めてくれません。

 どうすれば…。


 僕は、大好きな女の子の望み、要請。

 そんなことすら、叶えてあげられない駄目な男です。


 せめて、勉強、頑張りましょう。

 暑さを避けて、町の図書館。

 僕の青い春。

 残しておきたい、思い出。

 せめてもの。

 勉強。

 煌めく恋。

 恋人との熱い、熱い、ひととき。

 夢と消える。

 この暑い夏。


 数学の本を探す僕。

 苦手科目。

 手を伸ばす、図書館の本棚。

 すると、もうひとり。

 伸ばす腕。

 白い腕。

 細い腕。

 伸びてきました。


 本の背表紙。触れる手と手。

 振り返る僕。

 視線の先には、君が。

 

 君は、生徒会長。

 僕の恋の…。


 僕の心の熱源。

 恋の源泉。


 さっきから。

 重なっている、君の手の上。

 の、…恥じらう僕の手。


 僕は、真っ赤になり、君の頬もバラ色に。

 あわてた、ふたり。

 と、今年の夏。


 同じ本。

 ふたりは、隣の席で、お勉強。

 成績優秀、生徒会長。

 僕に優しく、三角関数。

 サインとコサイン。

 時々、触れ合う。


 追いかけているのは、サイン?

 逃げるのは、コサイン?

 それとも、君との時間?


 僕たちの恋の角度。

 何度でしょうか?


 次のお休みも図書館で、お勉強。

 学校でも、急接近。


 近づく夏休み。

 君に、会えなくなる夏休み。

 僕の周囲の暑さ。

 何処かへ、お出かけ中?

 不安は、暑さ対策に、有効です。


「夏休みも、図書館で」


 ふたりきりの帰り道。

 僕は、不安に押しつぶされ。

 口から勝手に言葉が、ポロリ。

 立ち止まる君。

 止まる、時間。


「僕は、君の事が、好き」


 ふたたび、ポロリ。

 

「ありがとう」


 泣いている君からも、ポロリ。


 僕の胸。

 寄り添う君の。

 オデコと長い髪。


 夏休み。

 僕たちの夏休み。

 毎日の図書館デート。

 近づくふたりの距離。


 花火大会。

 浴衣の生徒会長。

 うなじの誘惑。

 重なるふたり。

 イタズラな花火が、一瞬。

 映し出す。

 重なるシルエット。

 触れる手と手。

 と…唇。


 かけ足で、夏休みが、過ぎていき。

 まだまだ、暑い9月。


 生徒会からの連絡。

 みなさん。

 どうぞ、恋をして下さい。

 恋をすれば。

 残暑なんて、忘れてしまいます。


 恋は、暑さを吹き飛ばします。

 

 生徒会は、間違いました。

 生徒会は、訂正します。


 熱中症対策。

 睡眠、水分、熱い恋。


 生徒会長。

 検証済み。

 時々、塩分忘れずに。

 これで、残暑は、乗り切れます。


 ただし、

 私たちは、高校生。

 恋に、熱中し過ぎは、ご注意。


 それは、ほんとうの恋愛性熱中症。

      

       おわり





 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

恋愛性熱中症 @ramia294

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ