短く小さな掌編。それでも、色とりどりに輝く宝石に魅了されてしまう…!

 ある日訪れた宝石店。そこで出会ったルース(裸石と呼ばれる、装飾品などに加工されていない石単体のもの)に魅了された主人公を描いたシリーズの3作品目です。
 宝石の中でも、主人公はオパールのルースを気に入っていることもあって、シリーズを通してオパールを中心として宝石について描かれます。

 一人称かつ、会話文を中心に描かれているため非常に読みやすい。また、どの作品も掌編とよべるサイズでスキマ時間に読むことができる。また、ミステリー風に構成されており、常に興味と目新しさを持って読み進められました。

 1作目でルースの価値と共に基本的な知識、そして主人公がルースに魅了される過程を。2作目でルースの形状の意味や取り扱い方が触れられてきました。
 そうして読者である私も主人公と共に少しずつルースに魅入られていく中、今回の3作目で描かれるのは「色合い」でした。

 私が宝石と聞いて思い浮かべるのは「高い」や「綺麗」ですが、綺麗の根幹でもある色合いについて、その成り立ちや光り方を丁寧に説明し、描いてくれます。一人称ということもあって、まるで自分自身が宝石を手にして、赤や青に輝くその一瞬を眺めているよう。そして実際、検索してみても脳裏に浮かんだその輝きは正しく綺麗の一言でした。

 一方で、今回は価格設定についても再度触れられるのですが、どうしても“貴重さ”に重きが置かれるみたいです。それでも人には好みがあって、どれを美しいと思うかも千差万別。高いから1番キレイなのではない。あくまでキレイさという価値を決めるのは当人である自分。そんなテーマ性のようなものも見られて、思わず考えさせられました。

 ちょっとした時間に、本作を読みながら色鮮やかに輝く宝石を想像し、眺めてみる。シリーズの最初からでも、本作だけでも。軽い気持ちで手に取ってしまうと、主人公のように魅了されること間違いなしです。
 作者様の“好き”が確かな知識とともに描かれる。宝石が好きな方も、そうでない方にもおすすめしたい作品です!

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