2-21.命ずるままに
「万事、準備は整って御座います」
請われて数瞬、音も無く控えたジィ。
「変わらず仕事がお早くて助かりますわ」
そう言って呼び鈴を卓上に置き、華美な椅子から立ち上がり、
「では、出発致しますわ」
贅を尽くした自室を後にする。
何時か必ず戻る為、この状態を維持しろと命じているが、果たしてどれ程真面目にやってくれるか。忠臣としては、彼らの小心に期待するしかない。
今日、彼らはここから出て行く。
しかし、それは誰かに強いられたものでなく、
彼ら自身の意思で決めるのだ。
それを示すように、彼女は何一つ恥じることなく、
惜しむような素振りも見せず、
いつも通りに足取り強く、
胸は前に、肩で風を切り、
澄ました顔で、御髪を靡かせ、
商店に出掛けるような顔で、
当たり前のように今日を迎える。
滑らかに淀みない歩行。
紺地に金糸の貴民服。
棚引く裾が夜空を描き、
進んだ後に光の川が、踏みしめた跡から世界が生まれる。
彼女が支配する、絶対美を至高とする場所。
そこに“入門”する者達。
主君マリアと執事ジィの、二名分だった足音が、一つ、また一つと増えていく。
侍女長のクリスタンが、棍を担いで口笛を吹く。
調理係のエスティアが、大きな背嚢を背中に駆け寄る。
斥候のアライオが、皮の筒を複数本背負い追う。
庭師のヴゥルカーが、必要な家財道具を積めるだけ積んで待っている。
「揃いましたわね。いいですか皆さん?今回の旅の目的は——」
バチン。
歩きながら鼓舞しようとしていた、その足も口も止まった。
マリアの屋敷、これでもかと飾り立てられ、見る者を威圧する鋭角と派手やかさの門。
その傍らで、頭巾が付いた黒外套を羽織り、大きな巾着袋を提げ、欠伸をしながら立っている男。
一行が来たのを見るや、
「朝食が長えんだよ。急いで早起きした俺の努力を返せ」
寝ぼけ眼でズレた苦言を呈した。
——————————————————————————————————————
「貴方、そこで何をしていますの?」
随分と間の抜けた質問だと、翔はそう思った。
「出入りに邪魔ですわ。見送って下さる程の律義さを持っていたのには驚きでしたが、やるならお屋敷の玄関でお願いしますわ」
「誰が見送るか。てめえにお別れを言う程度の用事で、何で必死こいて起きなきゃいけねえんだ」
と、言うよりも、
「おい爺さん、俺はアンタには伝えてたよな?ヴゥルカーも俺の荷物持ってるよな?」
「把握しておりますな」
「お嬢は違うみたいだが?」
「…ジィ?
「聞かれませんでしたからなあ」などと惚ける執事。この男がマリアにもこういう事をするのは、翔には意外に見えた。
「まあいい、あんまり遅いとお前のアンチが、門の前で祝賀会でも開きそうだ。そういうのが寝てる間に行くぞ?」
ともあれ、彼は本当に付いて行く気らしかった。
「どういうつもりですの?わたくし、貴方をもっと脅かしておくべきでしたかしら」
「てめえの行く道が面倒なのも、ここが頗る安全なのもよく分かったよ」
「なら面白半分で、わたくし達と共に来るべきではありませんわ。大人しく王都で栄達の道でも——」
「断る」
冗談じゃない。
彼の目的は、誰もが認める客観的な“一番”に、“特別”になってやることだ。
運命だとか才能だとか、そういうクソみたいなものを蹴り飛ばし、唾を吐きかける。その為だけに戦っている。
その途上には、ヨハンもマリアも立ち塞がる。
打倒するべき障壁として、だ。
そんな彼女が、この世界の脅威と向き合い、戦うという。
その間王都で、安全と衣食住が保障された場所で、井の中の王冠を、お山の大将を目指して、それで何になる?
そもそも戦闘しか自慢できない彼が、平和な場所で栄転なんて出来るのか?
翔は断言する。
この小娘が生きて帰って来ることがあれば、王妃どころか王の器に成長しているだろう。
一方の彼がビビッてここに留まれば、ぬくぬくと腐り果てるのが関の山。
翔とマリアの差は、歴然となる。
——そうはさせねえ。抜け駆けはナシだ。
かつての彼だったら、残ったかもしれない。
だが今目の前に、勝たなければならない奴が居る。
具体的な“ライン”があるのだ。
この少女に先を越されるなどと、あってはならない。
今でさえ彼女の方が
マリアに同行し、奪えるものは奪い、弱点も見つけ出し、そして彼自身も研磨する。
それが、野望への最低条件である。
恐怖は有る。
底に穴の開いた船のように、二度と戻れず沈むやもしれない。
だが可能性があるのは、此方しかない。
どんな「言い訳」を考えても、王都に残る選択肢は有り得ない。
マリアは二択を提示したが、翔にとっては一本道だ。
彼が、その在り方にしがみつくなら。
「てめえに同情したんでもないし、行楽気分でもない。俺は俺の目的の為に、お前と行くと決めた」
「それだけだ」、それが全て。
そこに含まれた意味も願いも、マリアには分かっていないだろう。
けれども、意志は変わりそうにない、それだけは分かったようで、
ジュウ、
バチリ。
「それならば、よろしくてよ!」
もう、何も言う事は無い。
「わたくしと、召使隊7名全員!大変よろしくてよ!」
不可能に挑みに行くのではない。
やるべき事をやり、高みへと駒を進めるだけだ。
最初の調査地へ続く、その道路に繋がる南区外壁門。
彼らは、その方向へ堂々と歩いて行く。
これは、敗走ではない。
これは、進軍である。
「と、カッコつけたまでは良かったが」
門の前の人だかりを見て、
「お嬢、やっぱ遅かったじゃあねえか。完璧に出待ちされてんぞ」
その場の全員は、面倒事の気配を察した。
「あのマリア・シュニエラ・アステリオスが、入都を禁じられ放逐される」。
その報せは、思ったより早く広まったらしい。
悪事千里を走る、というお話。
「わたくしの門出をお祝いしてくださるなんて、珍しく気の利く方々ですわね!」
「プレゼントとか用意してそうだな。腐った果実とか生卵とか
「ああいうこと出来るくらいには暇なのって、とっても幸せな事だとお姉さんは思うな」
「ど、どどどどどうするです?こ、殺されますでしゅ…?」
「ね、ねね姉ちゃん落ち着け、流石にそれはないゼ。せいぜいワーワー言われてクスクスされるだけだ…うん…」
「あいつら、うるさい…殴る?」
「やめとけ」
千里の道の最初の一歩が、そうと見て分かる地雷原。
気も滅入るというものだ。
「さあ、何をしていますの!?行きますわよ!」
「どうしてそんなに元気なんだお前は…」
先頭をジィが、そのすぐ後にエスティアとアライオが続き、ヴゥルカーの左肩に乗ったマリア、その後ろには右にクリスタン、左に翔。
「……余計に反感を買うし、一旦そこから降りるってのは?」
「あら、どうして?」
「期待はしてなかったが、本当に不思議そうにするのはやめろ」
彼らが歩く先には、見物客と反マリアの集団の盛り合わせ。
面白がっている者、喜んでいる者、怒りを直接ぶつけたい者。それらが一度に野次を飛ばして、渾然一体の熱気は灼けつくように。
「出てけ!」
「せいせいした!」
「俺達『しもじも』よりも下になった気分はどうだ!」
「良いモン食ってフカフカの床で寝て楽しかったか!?」
「いっつも自慢ばっかでさ!あーすごいすごい!満足かい?じゃあ失せな!」
「税金払ってねえ奴が偉ぶるな!」
「怠け者の癖に私達平民を馬鹿にして!」
「生まれた家以外良いとこなんてねえだろ!」
「この国はてめえのもんじゃねえ!」
「頼りの王子様に見捨てられてざまあねえな!」
「あんたのせいでうちの子は死んだんだ!」
「
「玩具が欲しいんだろ!?くれてやるよオラ!」
「神様は見てるんだから!」
「無駄遣いをやめろっていうのを聞かないからだよ!」
「二度と戻って来るな!」
「キレイな顔に恵まれて!調子に乗り過ぎたね!あははは!」
これはひどい。
何をどうしたらここまで嫌われるのか、聞いてみたくもあり矢張りやめときたくもあり。
更に王都事変への不安と憤懣もプラスされ、収拾がまるでついていなかった。
——あ、本当に生卵投げてる。マジでやるんだな、ああいうの。
「お嬢様」に着弾する分は電雷で弾かれているが、配下にはしょっちゅう流れ弾が行く。「俺は関係無いからやめて欲しい」、それが彼の本音。
衛兵達は見て見ぬ振りであり、数歩進むのも一苦労。
翔はマリアがどう思っているのか気になり、彼女の方を見上げてみると、何故だか左方の一箇所を見つめていた。
翔も目を向けてみれば、群衆の中に何処かで見た顔。
顔を怒りで染め、品々や罵倒を投げつけるその男は、
——ああ、あの時の。
捜査中にマリアが罵った、浮浪者だ。
若干小奇麗になっていて、一瞬分からなかった。
あれに関して言えば彼女が全面的に悪いので、ボールの一つでもぶつけるのは許されるだろう。
それを見ているなんて、流石にショックでも受けているのかと、翔が再びマリアに目を向ければ——。
——え?
扇子で隠し、高い場所に腰掛けている為、角度的に翔くらいにしか見えない、
その表情。
高慢で、自信に溢れ、全てを見下し品定めするような、強く
ではなく、
「嬉しい」、そんな顔。
目元口元の端々が、温かく溶けて零れ落ち、緩み切った柔らかい笑み。
無くしたと思っていた宝物が、ある日ひょっこり見つかった。
そんな思わぬ幸せに、運良く出会えた少女のように、
彼女はただ、喜んでいた。
そして、一瞬で平素通りの笑顔に戻ると、
「ジィ!少しよろしくて!?」
前進に難儀していた執事を止め、
「ウル!じっとしていて!」
巨人の肩の上で立ち上がる。
「おい、進まねえと——」
するりと、裾を持ち上げて一礼。
狭いスペースで、極めて器用に、
よろめくことなく
無音で無言。
それで、皆が黙った。
抜けば玉散る名刀が、
目の前で顕になったかのように、
ゴクリと呼吸を呑み込んで、
誰もが神経を尖らせる。
「本日は、わたくしの為にお集まり頂き、誠に感謝申し上げますわ」
挑発にも取れるその態度を相手に、しかし場を支配するは凍てつく緊迫。
「けれど、御免くださいまし。わたくし本日は、皆様方の為に取れるお時間が、あまりにも少ないのですわ」
一言でも発しようものなら、瞬く間に摘まみ取られる、頂点捕食者を前にしたヒリつき。
「いずれ、再び
悪意と憎悪の全てを受けて、我が物とするその深淵。
「その日までどうか、お待ちくださいますよう」
あの復活の村の時と同じく、有象無象による責め苛みなど、
まるで相手にしていない。
「御機嫌よう、皆様方。また会う日まで、さようなら」
そう言って再び腰掛けると、ヴゥルカーがその足を動かし始める。
恐れと畏れが
結果、そこに道が成る。
静かで真っ直ぐな一方通行。
悠々と通り過ぎたる彼らに、放られる物は最早無く。
ゆっくりと閉まる門を背に、一向は漸く王都の外へ。
「さあ!お約束してしまったからには、確実に履行しなければなりませんわ!」
調子良くそんな事を言い出すマリアに、
「いやお前が一人で勝手に言い
巻き込むなと言いたげな翔。
だが彼の内心は、またしても混乱状態だ。
マリア・シュニエラ・アステリオスという人物が、より分からなくなってしまった。
驕り高ぶっていると思えば、冷静で礼も言う素直さも持ち、
神経質かと思えば、深く寛容な懐を持ち、
我が儘放題で強欲と思えば、理知的で英明な威厳を持つ。
まるで一貫性が無いようで、通った芯は違わず一本。
彼女を理解しなければ、超えることなど出来はしまい。
だがその不可思議を解くことが、甚だ困難だと予想された。
分かる事は、一つ。
マリアはまだ、高貴なままだ。
ならば——
「カケル!言っておきますが、特殊な身の上とは言え、貴方を特別扱いはしませんわ!わたくしの財を粗末に使うような、そのような真似だけは致しませんように!」
「よろしくて!?」、その念押しに対する答えは、
変わることなく、
「“Yes, your Majesty.”」
その「尊厳」が続く限りは。
マリアは矢張り、バチリと雷光を飛ばし、
「で、す、か、ら、それは何なんですの?」
意味不明な彼に問い詰めんとする。
が、翔に答える気は無いと見るや、らしくない聞き分けの良さで話を切り上げ、
隊員全てに命令を下す。
「それでは皆様!」
これから共に飛び込む、彼女の「お気に入り」達に、
「目標!
朗々と、高らかに、
「期間は無期限!敵側の勢力規模不明!」
オウリエラ昇る東を、軍配のように扇子で指して、
「必ず果たしますわよ!そして何より——」
絶対に満たすべきは、
「わたくしの所有物を、一つも欠かす事無く、全部この王都に持ち帰りますわ!」
つまりは、こういう事である。
「生きて、王都に帰還せよ」!
誰か何かの都合によって、
安全圏から締め出された者達は、
けれど、悲愴感など表に見せず、
未知への行軍を開始した。
——————————————————————————————————————
「あぁ~、やっぱり生娘はいいねえ…」
王都ミクダヴドに近い森の中。
それを聞く者は居らず、その姿を見る者も居ない。
その周囲には何者の気配も無い。
声の主のものでさえも。
「喉越しが違えんだよなあ~。なんでどいつもこいつも理解出来ねえかなぁ~」
空気が揺れる。
薄い遮光布でもあるかのように、景色が不自然に揺らめいている。
「ま、でも情報は得られなかったな。あれに接触したんだから、何か痕跡があるかと思ったんだけどよお…」
少女のような濁り声は、歪みの内から来ているようだった。
考えているのは、与えられた責務について。
「それにあのガキんちょを見張れって、意味わからん。本当に迎えは来るんだろうなあ?アトラの奴は話してて面白えから良かったけど、それ以外は最悪だぜ」
透明な管の中で、気泡が通り過ぎる。
まるでその声を宥めるように。
「あん?ああ大丈夫だってメドゥちゃん。心配しねえでも、オレサマちゃんは元気一杯さ。ただ睡眠がしっかりとれねえのは、美容によくねえからなあ…。なんたってオレサマちゃん、美貌の吸血鬼だもの」
揺らぎが移り行き、東を目指す。
あの一行に、追い付かなければ。
「ま、オレサマちゃんは出来る女だからなあ。言われた事はしっかりやりますよ~と」
その内、移動手段もやって来る。
さっさとこの場から離れ、目立たぬ場所で合流しなければ。
「オレサマちゃんの事を見れる運の良い奴に、早く会いてえなあー。それで、見せてえなぁー」
目に見えぬその声の主は、
白日の下に晒される、
その時を誰知らず
待ち望む。
——————————————————————————————————————
「面白かった」
「ああ本当に」
「いい気味だった」
「見たか?あの時の小娘の姿」
「あの慌てよう」
「あの憔悴ぶり」
「最高の余興だ」
「久しぶりの大当たり」
「生け簀の内で泳がせておいて」
「蝶よ花よと囃し立て」
「然るべき時が来れば」
「一掬いで収穫」
「十数年は長かったけれど」
「こんなにも美味になるとはな」
「やはり殿下の催しは良い」
「その前の演目もなかなか滑稽」
「蜘蛛伯爵と道化の舞踊」
「大いに笑い」
「大いに滾った」
「次はどうなることだろう」
「誰が居なくなるのだろう」
「楽しみだ」
「ああ垂涎ものだ」
「溜め込んだ宝物庫」
「隙間無き食卓」
「仄暗く
「それらに勝るとも劣らない」
「多幸感に病みつきになる」
「早く」
「早くこの次を」
「ああこれこそが」
「生きている証」
——————————————————————————————————————
「そろそろ出る時間か」
その呟きは、シャラム二の塔執務室にて。
「マリー、君は、何処まで行けるのかな?」
窓の外の、陽光に照らされる街を見て、答えが出る筈の無い問いを繰り返す。
「いいや、君が敗ける姿など、想像できない。きっと、最期にやり遂げるだろうね」
彼が舗装した遥けき道を、真摯一途に直進する彼女。
その末路は、既に決定している事なのだ。
「さて後は、奴らの動きが問題だ。私の予想が正しければ——」
「はろはろ~!お疲れ様~!」
その声を聞いた青年は、即座に振り向き跪こうとする。
「御出でになるとは知らず、大変な失礼を——」
「あーこらーもぉう!」
腰に手を当て頬を膨らませ、その態度に不満を示す、白衣に麦わら帽子の童女。
緑の黒髪に若葉色の目、その内右にのみ赤が混じる。
「言ったでしょう~?ここでこうして居る時のボクは?」
「……単なる町娘、アーコ」
答えを聞いた彼女は、唇をにんまりと歪め、
「せいか~い!はなまるっ!」
宙に指でぐるぐると描く。
「今回はどうだった?大変だった?」
「いいえ、アトラには付け入る隙が多々ありました。こちらの筋書きに乗せるのも容易で、慣れぬ事をしていた、という印象です」
「邪魔者を消して、しっかりと被害も出して、万事思い通りってこと?すごいねー鮮やかだねー」
その手を広げた状態で、くるくる左右に振って回って、
「キミは最もボクに近い思考の持ち主だからね。使いやすくて助かるよ~」
どこまでも気楽に、そう言ってのけた。
「あ、あとあのコはどうだった?どう思った?」
そこで急に向き直り、青年を期待の眼差しで見つめる。
最近の彼女が熱心に話す内容と言えば、半分は「あの男」についてである。
「興味深くはあります。ですが、大局には影響を与えないかと」
それが、彼の正直な感想。
「え~、そんなことないと思うケドなあ~。だって、“彼”が選んだんだもの」
「役目は果たすでしょう。効率化を図る上では、役に立ちます」
「便利ってこと?ならま、それでいっか」
「あの男」自体には拘りはなく、“彼”の判断が正しいと、それを認めさせたいだけ。
それ以外には、何ら興味が無いのだろう。
観察するまでもなく分かる。
青年の方はそうはいかない。全ての役柄を確定しなければ。
「お聞きしたいことが御座います」
童女は面白がるように、
「なあにかなぁ?」
「私はこれまで、定石通りの対処をすれば問題無いと、そう考えておりました。しかしながら、もしや——」
——既に、始まっているのですか?
問いかけと言うより、確認。
そして、
「おおきな、はなまるっ!」
9割9分が、
10割に。
「セレジアめ…」
青年は頭の中で、幾つかの計略を組み直す。
「王」は、見出されていたのだ。
「それじゃ、ボクはやる事があるから、引き続きよろしくね~」
「はっ。全てを御期待通りに」
童女は跳ねるように出口に向かい、戸は従うように独りでに開き、
「あ!」
そこで思い出したように、
「そうだ!キミにも聞いておかなくちゃ!」
力いっぱい振り返り、
「キミって、なんて名前だっけ?」
「……ヨハン」
今更聞かれた青年は、
けれど不服も不快も見せず。
「ヨハン・アポストロ・バシレイアです」
それだけ聞くと、「憶えた!」と上機嫌で手を振り、
「ばいばーい!」
童女が笑うその前で、
外への扉が
パタリと閉まった。
(Chapter2「王都へ生還せよ!」
Results:獣等級22体
雄等級1体撃破
酉雅翔召使隊に正式雇用
マリア・シュニエラ・アステリオス事実上王都追放
アトラ・ヨシュ・アラフヌ
アロ・テウミシア
ウェス・マンフィスリー死亡
各家財産と爵位剝奪の上王都追放
一般王都住民78名死亡
王都警衛隊員19名死亡
バシレイア支配機構変化なし)
(Next Chapter→「號を持つもの」)
A triger for the Majesty~落ちぶれ転生ゲーマーと嫌われ高飛車令嬢~ @D-S-L
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