えせ幸ひ

〈pixiv、百合文芸4に参加した作品になります〉
　幼い頃から勤めていた斎宮を母の急逝により、退下することになった綏子であったが、今度は父の言いつけ通り、後宮に入内することになる。

　他の自分付きの女房たちが、さめざめと嘆くのは、帝には既に他からも見るに絶えないほど、寵愛を抱いている女人が存在するとのことで、綏子が恋を知らないまま、入内をすることが悲しくて仕方がないということらしい。このままでは父憎しで生霊を飛ばしかねないと、女房たちの優しさを不安に思った綏子は、だったら、入内するまで恋の真似ごとをしようと思いつく。