未成年の遊戯は禁止されています。
デンデン、デレレン!!
今日も今日とてスロット日和。
ピエロのマークでお馴染みの超有名機種を仕事終わりに打っていると、どうにも昨日の出来事が嘘のように思えてくる。
えっ? あの後?
何にもないさ。
店を出た途端強面のお兄さん達に囲まれてさようなら。
そこから映画のような大立ち回りなんてしなかったし、非日常的なナニかが
俺に起こったわけでもない。
そんなわけで今に至る……なーんもなし!
だから俺は夏のボーナス分を取り戻すべく、スロットのボーナスに一縷の望みを託しているのであった。
……が。
「あーー!! クソッ!!」
300ゲーム回してようやくオバケが1回。余りの割の悪さに罵声を浴びせる。
そんなときだった、ふと視線を感じたのだ。
(ん?)
その方向を見るとそこには昨日出会った彼女の姿。
俺は驚きのあまり、思わず席から立ち上がってしまう。
そんな俺に気づいたのか彼女はこちらに小さく手を振ってきた。
「え? なんで?」
俺は思わずそう呟くと再び彼女を見る。
彼女は昨日と同じ制服姿でそわそわした様子で店内を見渡していた。
どうやら本当に俺に会いに来てくれたらしい……
しかし一体なぜ? まさか俺に一目惚れでもしたのか!? いやそんな馬鹿な! そんな都合のいい話があるわけ……いや、でも……
などと俺が妄想を繰り広げている間に、彼女は意を決したように真っ直ぐこちらに向かって歩いてくると俺の隣に腰掛けたのだ。
(えええええええ!?)
まさかの事態に頭がパニックになる俺を尻目に彼女は言った。
「こんばんは」
「……こ、コンニチハ」
突然のことに動揺する俺に構わず彼女は話し続ける。
「今日はお礼に来たんです……ありがとうございます」
そう言って頭を下げる彼女に俺はますます混乱してしまうのだった。
「お礼を言われるような事はしてないと思うけど……」
俺はそう言って首を傾げるが、彼女は首を横に振ると真剣な眼差しを俺に向けてきた。
その雰囲気に呑まれたのか、思わず背筋がピンと伸びる。
そんな俺の様子を知ってか知らずか、彼女はゆっくりと口を開いた。
「いえ、あなたは私を助けてくれました」
「いやでも……結局何もできなかったし……」
そうなのだ、結局あの後すぐに彼女の護衛である哲司さんとやらがやってきて彼女を連れ帰ってしまったから、俺は鼻の下を伸ばして、夜も更けた盛り場へ若い女の子を連れ出しただけの不審人物にしかなっていない。
「そんなことないです、あなたは私のために頑張ってくれたじゃないですか!」
彼女はそう言って俺の目を真っ直ぐ見つめてきた。その綺麗な瞳に思わずドキリとしてしまう。
(か、可愛い……)
俺はそんな邪念を振り払おうと頭を振るが、一度意識してしまうとその感情はどんどん膨れ上がっていくばかりだ。
そんな俺の様子を知ってか知らずか、彼女は言葉を続ける。
「それに……」
「それに?」
俺が聞き返すと彼女は少し恥ずかしそうに俯いてから言った。
「あの、それ……」
「ああ、このスロットマシンがどうかした?」
俺が尋ねると彼女はこくりと小さく首を縦に振る。
「私、ずっと気になっていて……。
組の若い人たちが楽しそうに話しているのを聞いて……だから昨日も……」
どうにも脈絡を得ないが、どうも彼女はこの
「ふ〜ん。じゃ、1度打ってみる?」
「えっ、でも未成年は……」
「1回くらい構いやしないって」
と、戸惑う彼女をよそに俺はコインの投入口にチャリチャリと何枚かコインを入れると席を立つと、
「ほら、ここに座って」と言って俺は席をポンポンと叩くと彼女はおずおずといった様子で腰掛けた。
そしてレバーを引いてリールが回り始めると同時に彼女の目は輝き始めた。
「わぁ!随分早く回るんですね」
「うん、で左から順番にボタンを押して、まずは左上にBarを狙って……」
ポンッ
「はい、できました」
俺の言葉に従い、タメもおかずにすぐさまボタンを押す彼女。
まぁ素人に目押しがどうのと行ってもちんぷんかんぷんだろうし……、と思ったのだが。
「…………随分目押しがうまいね。
しか中段チェリーだし。
じゃあ次は真ん中にまたBarを狙ってチェリーがはずれれば」
ポンッ
またもや間髪を入れずにボタンを押す彼女。
「……」
「あっチェリーが外れましたよ!」
はしゃぐ彼女を横目に俺はスロットマシンを回し、そして彼女はボタンをまたポンと押す。
「……」
ガコッ!!
「あっ、光った」
「おめでとう、当たりだよ」
正直思いましたとも。
最初の1ゲームでボーナスって、ビギナーズラックってレベルじゃないだろうってね。
GoGoランプは夜空に輝く ほらほら @HORAHORA
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