第3話
君はいつも遅刻をしてデートに来た。
吐くまでお酒を飲む人だった。
はじめての旅行ではバイキングで食べ過ぎて、レストランで吐いていた。
車道側に回ってくれなかったし、お店で奥のソファー席を譲ってくれる紳士ではなかった。
ホテル代も割り勘だった。
近所の年上の女性を「お姉ちゃん」と呼び、私に内緒で食事に行っていた。
塾講師として教えていた高校生をいつの間にか「妹」と呼び、電話をしていた。
私と飲んで酔って記憶飛ばして、昔好きだった女に電話をかけていた。
夏に申し込んだたった3日のアナウンサースクール集中講義で出会った女の子と2人で六本木デートしていた。
キレ症だった。
電話で喧嘩になったときは、いつも物を壊していた。
人気のないところに行ったらすぐに私の体を求めてきた。
痛いと泣いてもやめてくれなかった。
限界だった。
今思えば毎日泣いていた。家でも泣いていたし、学校でも泣いていた。
無意識に涙がこぼれていた。
友達に「これ以上あなたが壊れているところを見ていられない」と言われた。
このままでは自分が壊れてしまうと思った。
終わりにしなくてはならないと思った。こんなことをされ続けても「好き」という気持ちが消えないのが怖かった。そんな自分が嫌で、君に別れを告げた。
初恋 椎野 @shiino_
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