メリー・マイラブ

帆多 丁

つまり永遠にこう、ぐるぐると

「わたし、メリーさん。今あなたの後ろにいるの」

「僕はただの田中にすぎないけど、僕も君の後ろにいるよ」

「えっ?」

「僕たちはね、メリー。とてもとても大きな環の上で、お互いの背中を目指して、永遠の追いかけっこをするんだよ」

「何を言っているの? そんなことをして、あなたにどんなメリットがあるの? 永遠だとあなたは言うけれど、そんなのはいつか来る終わりをずるずると引き延ばすだけだわ」

「終わりは、来ない。だって君は、僕の後ろにきて、それからどうするの?」

「それは」

「僕はね、メリー。僕はただの田中だけど、この世の誰よりも君が好きな田中なんだよ。僕の背後に来て、それで終わりだなんて悲しい。だから、僕が君の背中を追いかけている間は、追いかけていられる間は、僕の背中を追いかけ続けてくれないか」

「ずるいわ、そんな言い方。わたし、メリーなのよ。あなたがあきらめない限り、ずっと追いかけなければならないじゃない」

「嫌?」

「どうしてもっと早く言ってくれなかったのよ! わたし、何度も電話したじゃない! その時にどうして言ってくれなかったの!?」

「ごめん。その頃の僕には、まだ勇気がなくて。でも今、君の声が聞こえる距離になって、初めてわかったんだ。このまま終わりにしちゃいけないって。君が僕を目指してくれているのなら、僕もそれに応えなくちゃいけなかったんだ。待ってるだけじゃ、君にふさわしくないって思ったんだよ」

「……生意気だわ。わたしの背後を取ろうだなんて、ただの田中のくせに生意気なのよ。やれるものなら、やってみなさいよ。ほら……言いなさいよ。待っててあげるから」


「――僕は田中。今、メリーを目指して歩いている」

「わたし、メリー。今、あなたを目指して歩いているわ」

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メリー・マイラブ 帆多 丁 @T_Jota

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