けんもほろろ
ばーとる
本文
「仮面ライダーとショッカーって、どっちが正義だと思う?」
本当に最悪だ。朝から頭が痛くなる。どうしてオタクというのはいきなり意味のわからない話を
とはいえ、不幸にもわたしにはこの質問に答える義務が生じている。なぜなら、わたしからこの女に声をかけてしまったから。いつものように「おはよう!」と言って教室に入ったら、中に居たのはオタク女ただ一人だけだったのだ。
そして、例の質問がオタクの口から出てきて、現在に至る。
ダルいダルいダルいダルい。あそこで会話が終わってくれていたらどんなによかったか。こんなことになるなら、お母さんと
さっさと答えて、この意味の分からない会話に
「ショッカーじゃないの?」
だから、知っていることを答えた。
さて、これでわたしは会話と言う名のバスに乗ったことになる。運転しているのがこのオタク女で、行先表示が読めないという二つの欠点を持ったバスだ。早く次の停留所に止まってくれないだろうか。
「そうなんだ」
その一言だけ
はぁ? 何? それだけ? 終わり?
会話の急ブレーキに
「ねえオタク、わたしのことバカにしてる?」
ああああああああああ!
言ってしまってから気づいた。そのままバスを降りてしまえばよかったのだ。絶好のチャンスを
「別に。あと、私の名前は
オタク女は開いたばかりの本を閉じてそう言った。
どうしよう。まさか自分で会話が続く流れを作ってしまうとは……。なんだかいろいろと腹が立つ。朝ご飯を食べていないせいだろうか。今日はなんだか調子が悪い。
もういい。
「じゃあ
「
どう考えても
ムカつく。とてもムカつく。
「何? それで、わたしにはあなたのことが理解できないと判断したわけ? 話を
「それはごめん。これ以上話が発展しなさそうだったし、
そういうことを平気で言うから友達がいないのだ、こいつは。
「私のことをあまり知らないくせに、勝手に私の考えを決めつけないでよ」
「それもごめん」
……………………。
わたし、なんでこの人に謝らせているのだろう。
「ねえ、
このまま
「私はどっちが正義でもいいと思う。ショッカー10人の中に仮面ライダーが1人居たら、悪いのは仮面ライダーの方になる。人数が逆なら
急に難しいことを言い出すから
「
「
「
聞かれて、困ってしまった。
「少数派ってことかな?」
なんとか
「じゃあ多数決には勝てないね」
多数決。正義と悪。この言い方だと、少数派であることが悪いことであるように聞こえる。考えてみると、多数派の悪なんて聞いたことがない。そうか。多くの人が正義だと認めてしまったらそれは正義になってしまうのか。
「少数派であることって悪いことなのかな?」
「私はそうは思わない」
その場しのぎの返事ではなく、はっきりとした主張だ。
「悪者っていうのは、多数派が共通の敵を作るために勝手に仕立て上げるもの。全部プロパガンダと同じ。日本だって、戦争中は
単純と言いつつ、話がいちいち難しい。ランチェスターの法則なんて初めて聞いた。でも、言いたいことはなんとなく伝わった……と思う。
「それは答える人によって
「そう。別に客観的な
今までわたしはこの人をおかしい人だと思っていたけど、話を聞いてみるとおかしな点は一つもない。むしろ、おかしいのは視野が
「今のは国と国の話だけどさ。学校の中でも同じことが言えると思う。善悪じゃなくても、少数派と多数派に別れることはよくある。友達関係がその例」
「確かに」
ここで言う多数派は、いわゆる
……私も
「
「うん」
「落ちた人が私のことだって
新学期が始まってすぐの
「それ、プロパガンダだから」
ここに来て全てが
「わかった。信じる」
そう言うと、
「ありがとう」
「ごめん。わたし、多数派の意見に
「いや、いいよ。自分の誤解を解くのは私自身の責任だから」
そういう
けんもほろろ ばーとる @Vertle555a
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