第13話 進むべき道
「途中の道路状況はまったくわからん。人類再生センターはまだ稼働状態にある。管理AIには君たちの情報を送信済みだ」
「ありがとうございました」
「ありがとね、
「気をつけてな」
劉生がキッククランクを蹴飛ばし、ドニエプルのフラットツインエンジンが始動した。劉生がクラッチをつなぎ、ドニエプルをスタートさせる。エリザはドクターHに手を振り続けていた。
「さて行先は岐阜県の飛騨市神岡町。旧神岡鉱山跡に建設されているスーパーカミオカンデの近所だ」
「人類再生センターだよね」
「そう。そこでは、ドクターHが開発したMTS(Mind Transfer System—意識転写装置)があって、主に医療目的で利用されてきた」
「うんうん」
「使い方次第では、死人を生き返らせる事もできるらしいんだけど、その辺は禁忌の実験に該当するとかで情報の公開は全くされていない」
「それで、何もわかんなかったんだね」
「そういう事。つまり、俺たち元人間である存在は、意識体を複写して元の人間へと戻る事が出来る」
「そうなの?」
「理論上はそうなんだ。でも、獣人や機械化人にMTSを使用した例はない」
「つまり、失敗する事もあるの?」
「まあ、そうだろうな」
「むむむ。これは、初体験ってやつね」
「エリちゃん、その言い方は……」
「あれれ? 意識しちゃうの?」
「する。っていうか、俺たちは決断しなくちゃいけないんだ」
「何を?」
「MTSを使用して、元の人間に戻るかどうかをだ」
「決断する必要?」
「失敗するかもしれないだろ? 機械化人と獣人には、まだ誰も経験者がいないんだ」
「だから何?」
「エリちゃん、怖くないの? 失敗したら死んじゃうかもしれないんだよ」
「怖くない。私は今、エッチしても子供ができないんでしょ。元の人間に戻れたら、子供が作れるんでしょ。あたし、いっぱいエッチしていっぱい子供が欲しいの」
「相手は俺しかいないんだけど、いいのか?」
「いい。っていうか、劉生がいいの。劉生じゃなきゃ嫌。ね、劉生。私と一緒に人間になって下さい。そして、私を抱いて」
「うん……ごめん。ちょっとトイレ。水分も補給する」
「ほれ、水筒忘れんな!」
「ありがとおっ!」
国道262号沿いの公衆トイレに駆け込む劉生だった。これから二人は防府東ICから山陽道に上がり、 名神高速 、東海北陸道を経て飛騨市神岡町にあるという人類再生センターへと向かう。元の人間へと戻り、結婚して子沢山の家庭を作る事を夢見て。
「あれれ。今の告白、はぐらかされたのかなあ? でも大丈夫だよね。あれはきっと、興奮して下半身が大変な事になってる証拠だから。お互い人間になれたら、ちゃんと私を抱いてよね。大好きな劉生♡」
[おしまい]
キミと一緒に終末旅行 暗黒星雲 @darknebula
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