第11話 コウスケ、ノンケに欲情する
20数年、聖書の教えに沿って生きてきたわけで、童貞(処女?)のまま過ごしておりました。
会社の人事異動で、5歳ほど年上の上司と組むことになりました。名前は杉田さん。男は2人。あと3名の女性と共に、資格教室を運営していくことになります。
杉田さん、ひょろっとした体型。低血圧。遅刻多い。最大の特徴は、マイメロマニア。言わずと知れたサンリオキャラ、マイメロディの収集家でした。スーツやカバンを見ているだけでは分かりませんが、ネクタイのちょっとしたところ、カバンの中の文房具類はほとんどマイメロ。30代独身男性がこういうキャラにどっぷり浸かっているのを見るのは初めてだったので、すごく興味深かったです。
仕事は、かなり出来る人。というか、人の話を聞くのが上手な人。なので、営業センスが抜群。我らの教室は、営業成績トップで何度も表彰されるようになりました。
仕事が大量にあり、ほぼ毎日残業。週に3回は、杉田さんと飲みに行き、職場で仮眠を取り、そのまま次の日仕事する、という生活をしていました。仕事について、お客さんへの接し方について、熱く語るのが好きでした。
こういう上司と共に働くことで、仕事にのめり込むようになります。集客目的で僕が作ったチラシがかなり好評。本部から徴集されて、全社で使用するパンフレットのデザイン担当に任命されることにもなりました。また、コウスケを引き抜きたいと言ってくださる方も増えました。が、杉田さんと仕事を一緒にしたいと言って、お断りしていました。
そうしているうちに、杉田さんへの尊敬という気持ちが、なんだかよくわからない方向へ向いていきました。恋しているのか?好きなのか?外見は全くタイプではないのですが……
酒を飲んだあと、そのまま杉田さんの家に泊ることもありました。マイメロに埋め尽くされた部屋です。杉田さんの寝顔を見ていると、股間を触りたくなる衝動が湧きあがってきました。かなりの葛藤はありましたが、そこまでの勇気はでない。なんとか、なんとか自制して、眠りについていました。
一緒に仕事をして2年程経ったころでしょうか、杉田さん、少し病んできます。どういう人なのか徐々に分かってきましたが、聞き上手というより、断れないタイプでした。そして相談を受けるとそれを自分の事のように対応してしまう人。心が大変そうでした。
そして、いつの間にか、別の教室スタッフAさん(既婚)と不倫関係になっていました。また、同じ教室の女性スタッフBさん(独身・若い・リスカ跡有)からアプローチを受け、大人の関係を持っていました。
ある日、Aさんからコウスケ宛に連絡が来ました。相談に乗って欲しいと。杉田さんと仲がいいからこそコウスケ君に聞いてほしいことがあるということでした。
職場近くの喫茶店で待ち合わせをし、コーヒーが届いたところで出されたのが、1枚の写真。小さめの白黒写真。もしや、これは!
そうです。エコー写真です。話を聞くと、杉田さんとの子供が出来たそうです。Aさんには旦那も子供もいます。中絶するので、そのことを杉田さんに報告したいのだが、自分からなかなか言い出せない、助けてほしい、ということでした。
さらにその頃、Bさんは、コウスケにかなり警戒心を持っていました。というのも、Bさんはブログを開設しており、自分の気持ちを書き綴っていたのですが、職場のパソコンからログインして書いていました。メンテナンスしていた僕からすると丸見えの情報でした。Bさんと杉田さんの関係も、これで発覚したのです。さらに、Bさんは、「コウスケさんは杉田さんが好きみたいだ。」とも書いていました。バレてる!ビックリですね、女性の勘の良さは。
コウスケは、自分の欲情を抑えつつ、杉田さんとプライベートで会うことにしました。そして、Aさんの覚悟を伝えました。わかった、ごめんな、そんな伝言をさせて悪かった。と何度も謝ってきました。ここで、腹が立ってきて、Bさんとの関係もちゃんと清算するように言いました。Aさんのことは、本当に好きだったそうです。でも相手は既婚者。子供はおろすと言っている。さらにBさんともセックスしていて、別れられないと言っている。あの子は弱い、支えてあげないといけない、とほざく。
エホバの証人をやってた時には考えられないような事象が連続して起こっています!ドラマでしか見たことないようなことが目の前で起こっています!
エホバの証人は、婚前交渉×、堕胎×、不倫×、浮気×。
いま目の前で起こっている男女関係、これが世間一般的なことなのか!と大ダメージを受けました。まだまだ
やがて、Aさんは手術も終わり、仕事を辞めました。杉田さんは、心を病んで、休職しました。Bさんも仕事を辞め、杉田さんの介抱をしていたようですが、どうなったか分かりません。しばらくして、コウスケも心にぽっかりと穴があいたような、無気力になったような。燃え尽きてしまったのでしょうか、退職することにしました。
こうして、恋愛対象は女性だったコウスケ、初めて男性に恋心のようなものを抱いたのでした。そしてそれは、その相手の激動の人生によって崩壊したのでした。さすがに女たらしにはついていけませんでした。
こうして、特定の男性への恋心のような、性的ムラムラした感情のような、杉田さんへの想いは消えていったのでした。
おっさんになると自叙伝を書きたくなるのが分かってきた コウスケ @kousuke777
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