第58話 まさかの再会

「ふぅ、結構料理美味い料理だったな」


 あれからテレサと二人適当な定食屋に入り料理を注文したのだが、ボリュームこそ足りない物の味付けにはそれなりに満足することができた。


『そうですね、スパイスが効いていて美味しかったと思います』


 テレサの微妙な反応に俺は首を傾げると、


「ああ、ちょっと辛かったか?」


 そういえば普段よりも多く水を飲んでいたことを思い出す。テレサは辛い料理が苦手で、以前も名物の激辛料理に手を出しては涙目になっていたのを思い出す。


『普段食べなれない味だったので食べ辛かっただけです』


 俺の指摘を彼女はムッとしながら否定する。他人に弱みを見せまいとする強がる姿は見ていて微笑ましいのだが……。


『それより、私を満足させられなかったガリオンには罰を与えなければなりません』


「罰って何をするつもりだ? 氷で串刺し? 火あぶり? それとも風で服を切り刻むのか?」


『ガリオンは私のことを何だと思っているんでしょう? あちらですよ』


 テレサが杖を向けた先にはお洒落なカフェがあった。

 テラス席では女性が楽しそうに談笑をしながらスイーツを楽しんでいる。


「つまり、料理が辛かったから口直しに甘いものを食べたいということだな?」


 俺がズバリ指摘すると、テレサはそっぽ向いた。

 これ以上からかうと怒りのゲージが振り切れそうだ。


「ちょうど俺も甘いもの食べたいところだったし行くとするか」


 そう言って彼女は俺の手を握ってくると、


『早く行きましょう』


 カフェへと向かうのだった。



 カフェに入り注文をしようとしていると、


「「あああああああああああっ!?」」


 大声が響き顔を上げる。するとそこには……。


「お前たちは……誰だっけ?」


 エロい格好をした見覚えのある女が二人いた。


「アリアですっ!」


「ライラよっ!」


 二人は俺を睨みつけながら名前を名乗るのだが、どうにも思い出すことができない。


「すまんな、昔飲み屋であった娘だっけ?」


「あんた最悪っ!」


「私たちにあんなエッチなことしておいて酷すぎないっ!?」


 二人の声が大きいせいで周囲から注目を集めてしまう。


「人聞きの悪いやつらだな、俺がそんなことをするわけがないだろ!」


 濡れ衣にも程がある。俺は嫌がる女性に手を出すような真似をしたことはないのだ。毅然とした態度で断固として戦うつもりでいると……。


『いえ、まあガリオンは割とそういうことやりますけど』


「おいっ!」


 まさか後方から仲間に撃たれるとは思わなかった。テレサの証言によりこの場にいるすべての女性の目が険しくなっていく。

 まるで女の敵かゴキブリを見た時のような視線を俺に向け始めた。


 ここは一時撤退か土下座かの二択を迫られ、この二人にはどうしても頭を下げたくない気がして撤退を選択しようと考えていると……。


『二人ともお久しぶりですね』


 テレサが二人に話し掛けた。


「まさかこんなところであんたに会うなんてね……」


「そっちこそ、元気そうじゃない」


 苦い表情を浮かべるアリアとライラ。それにテレサ。


『この二人は私と一緒に栄光の剣でパーティを組んでいた方ですよ』


「ああ! 思い出したっ!」


「嫌味じゃなくて本当に忘れてたっ!?」


 ライラが大きく目を見開くと指差してきた。


「だって俺、基本的に嫌なことは寝て起きたら忘れるからな」


 テレサを苛めていた三人組がいたことは覚えているのだが、その顔まではいちいち覚えていない。

 脳の容量が勿体ないので、今ではこの二人の顔が一致するがもう一人の男は目に線が掛かっている上、視界の端っこに丸い枠で映っている程度だ。


「それで、お前さんらがどうしてこの国にいるんだ?」


 わざわざ話し掛けてきたのだから少し相手をすることにする。またテレサに嫌味を言われて彼女が傷つくのは避けたいからな。


「あんたらのせいで、ギルドにい辛くなったからこうして国を出たんだよっ!」


「ここに来るまで苦難の道のりでしたわ」


 ライラとアリアは苦しそうな表情を浮かべるとそう告げる。

 これまでの順風満帆な冒険者時代と違って苦労したようだ。


 そのことで心がスッキリした俺は、


「それで、ルクスはどうした? 死んだのか?」


「死んでないしっ!」


「勝手に殺さないでくださいなっ!」


 二人は憤慨すると俺に怒りをぶつけてきた。


「単にルクスが依頼を探している間、私たちはここでお茶をしていただけ!」


「そこにあなた方がのこのこと現れたのですわ」


「ええ……」


 だったらそのまま無視してくれればよいのに。嫌いな相手にわざわざ絡む必要はなかろう。


「仕方ない、テレサ。口直しはまたの機会にしよう」


 俺としては彼女のトラウマであるこの二人がいる店で呑気に茶をするつもりはない。


『ガリオン、別に私はここでもいいですよ』


「そうもいかんだろ」


 アリアとライラを見ながらそう言うテレサを引っ張り店を出ようとすると……。


「おっ!」


「なんだっ!」


 出口で男とぶつかりそうになる。


「あっ!」


「て、てめぇはっ!」


 互いに指を差しあうと……。


「よぉルクス。久しぶりだな」


 俺は嫌悪の感情を押さえつつルクスに話し掛けるのだった。


※宣伝


御無沙汰しております。まるせいです。

時間が空いてしまって申し訳ありません。

商業作業が多く、なかなかWeb更新まで手が回らない状況になっております。


早速ではありますが二つ宣伝をさせてください。


一つ目は、


新作

「女神から依頼を受け、俺が『異世界』を征服することになった件~チートマシマシで異世界勢力図を塗り替えていきます~」

https://kakuyomu.jp/works/16818093077029600284

の投稿を始めました。

こちらは原稿の合間に気分転換で書いている作品になります。他のWeb投稿作品と同じような読み味になりますので、良かったら読んでみてください。


二つ目は、こちらがメインになるのですが、


「Fランク冒険者の成り上がり~俺だけができる《ステータス操作》で最強へと至る~」

 こちらの作品のコミカライズ単行本2巻が5月15日(本日)発売となりました。

 Web版とも書籍版とも違ったコミカライズ独自の物語となりますが、面白さは保証します。

 まだ読んだことがない場合、是非一度手に取って読んでみてもらえると嬉しいです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

「お前を追放する」追放されたのは俺ではなく無口な魔法少女でした まるせい(ベルナノレフ) @bellnanorefu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ