第57話 ラングリッサ王国に到着
カプセを出発してから二週間が経過した。
俺たちは順調にラングリッサ王国へと到着した。
『道中、ワイバーンに襲われたり、寝坊して馬車に乗り遅れたり、ガリオンとスクイズがギャンブルして盗賊ギルドに暗殺者を差し向けられて慌てて逃げたりしたのを順調というのですか?』
長文を書き終えたテレサの瞳は濁っており、全身ボロボロになったエミリーが涙目になり、白目をむいて気絶しているスクイズがベンチに横たわっていた。
「まあ、色々あったが結果として予定通りの日程で全員無事でこうして到着したんだから問題なし!」
三人から無言の圧力を感じるのだが、それはこの際良いだろう。
「はぁ……、それじゃあ私は師匠に挨拶に行こうと思います」
最初に立ち直ったのはエミリーで、彼女はベンチから立ち上がるとスカートをパンパンと払い、帽子の位置を整え身だしなみを気にする。
「ああ、それじゃ、またな」
元々彼女は用事があってラングリッサに来ていたので、ここで別れるのは予定通りだ。
俺もテレサも手を振って彼女を見送る。
一人いなくなってしまったので、この先どうしようかと考えた。
「いやー、道中一緒だった可愛い魔法使いの子がいなくなるのは寂しいよな」
「お、おう。そうだな……」
スクイズが腕を回し肩を抱いてくる。確かにエミリーが居なくなるのは寂しいのだが……。
「安心しろって、親友。俺は何時たりともお前と一緒――」
『ガリオン、スクイズは滞在費も借金しています。ここは冒険者ギルドで稼いできた方がいいのではないですか?』
「だとよ、スクイズ」
「お、おお……。俺も別に踏み倒すつもりはないんだぞ?」
テレサは半眼で疑うような視線をスクイズへと送る。
確かにこいつは金にだらしないので、このままずるずる行くと、ラングリッサ滞在中の面倒を見なければならなくなるかもしれない。
やがて、テレサの無言の圧力に屈したのか、
「俺、ちょっと冒険者ギルドで適当な依頼受けてくるよ!」
大慌てでその場から離脱していった。
到着するなりあっという間にいつもの二人に戻ってしまった。
『二人きりになりましたね』
テレサはフフフと笑うと、嬉しそうな様子を見せた。
『この後どうしましょうか?』
白銀の髪を指に巻き付けながら、チラチラとこちらを見て意見を聞いてくる。
「そうだな、まだ宿に行くには時間も早いし……」
馬車の進行速度の都合で、到着したのが昼過ぎなのでまだ活動できる時刻だ。
「それじゃあ、適当にこの辺を見て回るか?」
『はい!』
テレサはそう答えると俺の手を握るのだった。
テレサと二人、手を繋ぎラングリッサを歩く。
ここは鉱山を掘るために人々が集まり国となっており、住居は岩を魔法で削り出したものが利用されている。
さながら、アリの巣のように迷路のように広がっていて、坂が多く様々な場所に出口がある。
外にでると、大通りがあり、露店とともに大勢の人が行き来しているので、俺は決してはぐれないようにテレサの手をしっかりと握り直した。
『こうして知らない土地を二人で歩くのも楽しいものですね』
テレサは身体を寄せると文字を書きそう伝えてくる。
「確かにな、それぞれの国によって文化も異なるけど、こういう自然物を利用した街造りは新鮮で面白いな」
ミリィちゃんあたりに話すと目を輝かせて聞きそうだ。
『今ガリオン、他の女性のこと考えてませんでしたか?』
テレサは半眼で俺を睨むと握っている手に力を入れる。
「いや、ミリィちゃんへの土産をどうしようかと思っただけだぞ?」
『まあ、ミリィにお土産ならギリギリ……許しませんけどね』
頬を膨らませワガママを言うテレサ。最近はスクイズやエミリーと一緒だったからなり潜めていたが、子供じみた言動をとって俺を困らせようとすることが多い。
「どうすれば、機嫌を直してもらえるんだ?」
そんな時、俺は全面降伏すると彼女自身に回答を求める。
『ひとまず休憩したいので食事をしましょう。ガリオンが選んだ店の食事が美味しければ許します』
「これは、選ぶのに中々時間が掛かりそうだぞ」
テレサの好みは把握しているが、どれだけ探せばその手の店が見つかるだろうか?
『まあ、時間はたっぷりあるのでゆっくりと探してみてください』
テレサはそう言うと俺に笑いかけてくるのだった。
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