第5話 危機一髪!
すぴー、すぴー、パチン!
「ハッ」
鼻ちょうちんが割れて目を覚ます。周りを見渡すと僕の作ったくつろぎスペースいっぱいに先輩団員たちが寝そべっている。あー、これ《鼻ちょうちん》ゲーム的な処理なのか。
起き上がって体を伸ばしていると先輩たちが次々に起き出す。ジェフさんも起き上がって話しかけてくる。
「おはようハート君」
「あっ、おはようございます」
「いやー寝て起きたらいよいよやることないな!サーフィンとかする?」
ジェフさんが浜の方を指差す。木の板でサーフィンを楽しむ先輩の姿がチラホラみえる。
「いやー、あんま気乗りしないっスね。それよりも今日初ログインなんでこのゲームについて知りたいッスね」
「いいだろう、じゃあちょっくらレクチャーしてやろう」
ジェフさんからこのゲームのいろはを教わることに。まずゲームの1番の楽しみはデミゴッドとのコミュニケーション。1:全員で雑談したり、ゲームをしたり、デミゴッドによるが歌ってくれたり稽古をつけたりしてくれるらしい。
ゲーム内でゲーム?と思ったがビーチフラッグのようにプレイヤー参加型のものあればデミゴッドがプレイするレトロゲームを見ながらみんなでやいのやいのしたりとなかなか楽しそうだ。
あとは一応この世界で旅をするのもオーソドックスな楽しみ方らしい。
「へえー、僕はなんかわけがわからないうちに戦闘に巻き込まれてここまできちゃったからなぁ」
ジェフさんにこれまでの経緯を話すといつのまにか起きていた先輩たちも周りで聞いていて口々にそんなことはなかなかないという。
ランダムな場所に降り立つのと自分と相性のいいデミゴッドの近くに降り立つのはよくあるけど、戦地のど真ん中なんてほとんど聞かないという。
はじめは村や町をめぐって自分の推しデミゴッドを見つかるのがオーソドックスらしい。村にも町にも行ってないので興味が湧いてきた。
「そうだな。実はデミゴッドは勝利点や経験が貯まるとアップデートに入ってしばらく休眠状態になるんだ。今回の船長もたぶんそれで、しばらく目を覚まさないだろう。そこで、だ。オレたちがお前を手近な村に飛ばしてやろうか?」
「えっ、ワープゲート的なものがあるんですか?」
「そんなものないが?なんというか、まぁ見たほうが早いな。行くぞ」
そう言って大砲へと案内される。そしてその横に並べられたタルを指差す。
「あそこにお前が入って、オレたちで打ち上げる。よし、やってみようか」
「えっ、いやですよそんなの!」
「大丈夫。職業がパイレーツになった時点でお前はもうこの島のリスポーンモノリスに登録されてる。なにかあっても死んだら戻ってこれる」
「死に戻りなんて嫌っス!せめて船で行きましょうよ!いやサーフィン!サーフィンしたいなぁ」
船というワードを出すと周りの先輩たちの雰囲気が変わる。
「船、、パイレーツなのに船がないオレたち、、」
「あぁ、出航したい」
「ハートよう?いい感じの船があったら奪ってこいよ?」
「おっしゃ、打ち上げるべさ」
ハイライトの消えた目をした先輩たちに手際よくタルに押し込まれ大砲にセットされる。
「まぁあれだ!運良く相性のいいデミゴッドに出会えたらスキル覚えて帰ってこいよー!
「達者でなー!!」
「ぜってぇ帰ってこいよな!絶対だぞ?」
「まず撃ち出すのをやめてぇええ!?」
そして油の染みた縄に着火される。
ドゴォン!!
「「「いってらっしゃーい」」」
「うっそだろおおおお!!」
そして僕は爆音とともに射出されるのであった。
「ハート君、あいつはいいやつだったよ」
「やっぱりゲームはこれくらいのノリでやんないとな」
「ゆうて船長アップデートしてる間マジでひまだからな」
「「「あっはっはっはっは」」」
トレジャー・パイレーツの団員からしたら割と日常の光景なのだった。
ウエポンズゲート @Dizabo
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