13  エピローグ・ポチ





「ただいま。」

「ああ、ポチおかえり。もう帰って来ないかと思ったよ。」

「それは無いだろ、お疲れぐらい言ってくれよ、万年青おもと。」

「面倒くさいよ。」

「ところで店はどうだい。」

「パッとしないね、あんたが持ってくるものはほとんど売れない。

あたしが買い付けたものは売れるけどね。」

「陳列が悪いんじゃないか。ちゃんと並べてくれよ。」

「……あのさ、さっきから気になっているんだけど、

あんたの鞄の中、何がある?」

「あ、ああ、人から土産にもってけと言われたんだ。これだよ。」

「えっ、花束じゃん。しかもこれ、なんかすごいよ。」

「分かるかい?不死鳥が作ってくれたんだよ。

留守番に持ってけって。」

「あたしにだよな。」

「多分そうだろう。」

「あー、物凄くうれしい、あんたが持って来たもので初めてうれしい。

これは本当に良いものだよ。

結婚式のブーケに使うよ。」

「………………、

結婚式?え、結婚式?」

「うん、結婚式だよ。あたし結婚するんだよ。

だから店もたたむよ。」

「お、あ、い、いつ?たたむって、えっ?」

「結婚式は一週間後だよ、言わなかったっけ。」

「聞いてないよ、待てよおい、誰とするんだよ、

おい、店はどうするんだ。」

「だから店はたたむって。

あんたには世話になったけど

物事には始まりがあって終わりもあるんだよ。」

「勝手な事言うなよ、俺への借金はどうするんだよ。」

「安心しなよ、あたしのダーリンは大金持ちでさ、社長さんなのよ。

あたしは社長夫人、うふふ。」

「うふふ、ってお前……。」

「ダーリンはちょっと変わった人でさ、

骨董品とか見るのが好きでたまたまこの店に来たのよ。

この店はあんたが持って来た変なものがあるから、

気に入ったみたいで何度も来てくれたの。

でもね、結局はあたしに会いに来るのが目的になったんだって。

うふふふふ。」

「うふふって……。」

「なんだよ、祝ってくれないのか?

それかあんた、あたしに惚れてた?」

「それは絶対に無い。

しかし、不死鳥が留守番の人にあげな

と言ったのはこういう意味だったんだな。」

「その不死鳥があたしに渡せと言ったのか?」

「そうだよ、不死鳥は全ての始まりだ。

万年青に何かが始まったんだよ。」

「ふうん、あたしはその不死鳥さんはどんな人か分からないけど、

ともかくこの花束は物凄く良いとは分かる。

大事にするよ。」

「そうか、あの人も聞くと喜ぶよ。

……おめでとう。幸せになれよ。」

「ありがとう、あんたも良い人が見つかると良いね。

で、ご祝儀は。」

「何言ってるんだよ、花束で十分だろう?」

「それとこれは別、ちゃんと寄越せ。」

「それより、この店が無くなったら俺はどこに帰ればいいんだ?

探さなきゃならん、面倒だ、全く面倒だ。」

「まあ店が無くなってもあんたが持ってくる変なものは、

多分ダーリンが気に入ると思うから連絡してよ。」

「……お金持ちなんだよな、早めに紹介してくれよ。」

「あいよ、あんまり金持ちっぽくなくて普通だからびっくりするよ。

それとお兄さんがいて学者さんなんだって。」

「へー、すごいな。」

「そのお兄さんも変な人らしくて、

変な人には耐性があると言っていたから

きっとあんたとも気が合うよ。」

「変な人か、俺は変な人ジャンルなんだな。」

「他に何と言えばいいんだよ。

どう見ても変人だろ。」




一週間後、無事結婚式はとり行われた。

あんなしおらしい万年青は初めて見た。

相手の男性も優しそうな男だった。

一安心だ。


そして私は思わぬ人と再会した。






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ポチ・イクマヌ・ドクスクト ましさかはぶ子 @soranamu

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