第11話
話をしているうちに実感として湧いてきたのが、自分でも想像していた以上に、彼女の家族に気に入られている!という感覚だった。
これは、今がチャンスかもしれない!!
そう思ったオレはおもむろに座布団を下りて畳に直接座り直し、二人のほうをむいて言った。
「あの、お母様とお兄様には、今日はじめてお会いさせていただくのですが。あの、こんなこと突然申し上げて、不躾だということは重々承知していますが。あの、もしも、許していただけるのでしたら、おつきあいではなく、この方を僕…いや私のお嫁さんとして、迎えさせていただけませんか」
緊張しすぎて、日本語がおかしくなった気がするが、言うべきことは言ったし、伝わったと思う。
その証拠に
「ええええええ?!」
横で聞いていた彼女が、びっくりしたような声をあげて(きゅう…)
そのまま気をうしなってしまった。
(あ。ヤバ。先に言っておくべきだったか?)
さすがに、彼女にプロポーズする前に家族に『結婚させて』宣言はまずかったかな?と後悔する。
でも言ってしまったものは仕方がない。
気を失って横になっている彼女も心配だが、家族の反応も気になったので、二人のほうに顔をむける。
二人は顔を見合わせてにっこりと笑い、オレのほうに向きなおって言った。
「不束者の娘ですが、どうぞよろしくお願いします」
「こんな妹でよろしければ、末永くよろしくお願いします」
それからとんとん拍子に話が進み、彼女の大学はどうするのか、住むところは…などなど『近い将来の結婚』話が、当人が気を失ったまま、具体的に進んでいった。
「うん?」彼女が目を覚ます。
「気がついた?びっくりさせてごめん」
「え?あれってほんとのことだったの?夢じゃなく?」
「ほんとのことだよ」
「ほんとにほんと?その、私があなたとケッコンって」
「ああ。もちろんだよ。オレはキミと結婚したいと思っている」
彼女がたたみにひじをついて身体を起こそうとしたので、手を貸して起き上がる手助けをする。起き上がった彼女は、母親と兄さんのほうを見た。
ふたりとも優しそうな笑顔をうかべ『おめでとう』と口にした。
それを聞いた彼女は、涙をポロっとこぼし『ありがとう』と答えた。
そして彼女はオレを見上げてニッコリと笑って言った。
「どうぞ、よろしくお願いします」
「こちらこそ、お願いします」
そう言ってオレは、彼女をギュッと抱きしめた。
オレは腕の中の彼女のぬくもりを感じながら、幸せをかみしめていた。
『コレデコノコハオレノモノ』
了
オレ ガ アノコ オ テ ニ イレルマデ。 奈那美 @mike7691
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