第2話 プロローグ2
夏目と別れた後、家に帰ってからも夏目の言葉が頭から離れなかった。
―好きだよ、蒼介 その言葉が何度もリピートされる。
夏目から言われたのは初めてだった。
いつも明るく振舞っている彼女があんなにも真剣に想いを伝えてくれたのに俺はなんて答えれば良かったのだろう。
結局一晩中考えても何も思い浮かばず、寝不足のまま登校する。
教室に入ると夏目の姿はなかった。昨日の事を思い出して少し気まずくなるが、クラスメイトに挨拶をしながら自分の席に向かう。
(夏目いないな、休みかな)
席について荷物を置く。夏目がいなかったせいなのかは分からないが、今日は少しだけ静けさが感じられた。
そして担任の先生が来て朝のHRが始まる。
先生は連絡事項を言い終えるとすぐに本題に入った。
しかしその内容はとても信じ難いものだった。
「えー・・・天川夏目さんが家に帰っておらず、行方不明だそうだ。」
一瞬頭が真っ白になる。
夏目が行方不明だって・・・?
だけど確かに昨日家の近くの道で分かれたはず。
あのまま家には帰らなかったのか?
じゃああの後一体どこへ行ったんだ?
あの道から夏目の家まではあまり距離がない。誰かに襲われたってのは考えにくいな。
夏目が自分の意志で家に帰らなかったのか・・・?
思考を巡らせるが全く答えは出なかった。
それにしてもどうしてこんなことになったのだろうか。
いくら考えても全く分からなかった。
その後の授業は全く身に入らなかった。夏目が行方不明になったというニュースで学校中は持ちきりになり、授業どころではなかったのだ。
しかし放課後になっても夏目は見つからなかった。
警察や大人達が必死に捜索しているが、手がかりすら見つかっていないらしい。
そして俺も帰る時間となった。
俺はいても立ってもいられず、夏目を探しに行くことにした。
夏目が行きそうな場所を片っ端から探してみる。
だがどこにも夏目はいなかった。
途方に暮れていると、ある場所にたどり着いた。
昔夏目とよく遊んでいた公園。
「よく砂場で城とか作ってたっけ・・。」
夏目との思い出が蘇ってくる。
夏目はお互い成長した今でも俺のことを大切に思ってくれていた・・・。
俺も夏目が大切だ。なら今は夏目を信じよう。
きっと明日にでもか姿を現すはずだ。そして伝えるんだ、するんだあの日の返事を。
1週間が経過した。夏目はまだ見つかっていない。
警察も学校もありとあらゆる手を尽くしたが見つからなかった。
俺があの日夏目としっかり向き合っていれば。いくら自分を責めても夏目は帰ってこない。
どうすれば夏目は帰ってくるんだ・・・。
そんなある休日、俺宛の手紙がポストに入っていた。
「差出人は・・・書かれてない?」
怪しいと思いつつも封を俺宛て内容を確認する。
「私は君が欲しい情報を持っている。
知りたいのなら指定の場所にきなさい」
俺は家を飛び出した。誰かのいたずらかもしれない、夏目をさらった犯人の罠かもしれない。
だけど今は少しでも情報が欲しい・・・!
指定の場所に到着する。そこは人目のつかない空き地だった。
「やぁ君が朱羽蒼介君だね?」
後ろから声を掛けられる。
「手紙は読んでもらえたかな?」
「夏目はどこにいる!」
「落ち着いたまえ。私はただ天川夏目をさらった犯人を知っいるだけだよ。」
「!!夏目は誰かにさらわれたのか?」
なら一刻も早く助けないと・・・・!
「助けたいだろう?なら私と取引をしないか?」
「取引?」
「簡単だよ、君の学校にいるある人物を探して名前を教えてくれればいい。」
「俺の学校・・・?それはどんな奴だ。」
「あー特徴をいうが決してふざけてないということを前提に聞いてほしい。」
「わかった。早く言え。」
男はすこし咳払いをした後、こう告げた。
「君には翼がある女を探してほしい。」
たとえ翼がなくたって アンドリウス @andoriusu57
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