第7話

「おい、やめろっ!」


 遠くにいた男性の教師の叫び声が響く。見ると彼は、こちらに走ってきていた。


 でも、きっと間に合わない。その前に沙織は死ぬ。


「誰かあいつを止めろっ!」


 走りながらも間に合わないと悟った教師が、他の生徒たちに叫んだ。


 それを聞いた私は、横目に取り巻きの方を見る。取り巻きは怯えた表情で、こちらを見て立ち竦んでいた。後ろにいるギターとベーシストも同様だ。


 ほら見ろ。こいつらは何にもできないんだ。私が殺すことを、止めることなんて出来ない。


 だってこいつらは、何もしなかった。そんなやつらが、誰かを助けるなんて、おこがましいんだ。




「死ねぇええええ!」




 私はそう叫んで、さらに力を込める。やがて沙織は、締まっていたコードに伸ばしていた手を、だらりと垂らした。


「あっ……」


 近くまで来ていた教師が、それを見て思わずそう声を漏らした。


「どけぇ!」


 教師は私を突き飛ばす。後方へ吹き飛ぶ私。


 その瞬間、何だか世界がスローになったような感じになった。


 突き飛ばした教師が、沙織の容態を診ようとしている。もうどうせ、死んでいるのに。


 何もしなかったのは、あんたら教師も同じだ。だから助けられないのだ。



 今度は間違いなく、みんなの前で人を殺してやった。


 生徒たちは、殺人事件が起こった学校の卒業生として、一生を生きていくがいい。


 教師だって、目の前で殺人事件を起こしてしまった責任と、社会の弾圧に苦しむがいい。


 もうあんた達は、他人事じゃない。


 あはは。ざまーみろ。



――ガンッ!



 後頭部に衝撃が走る。吹き飛んだ勢いで、床に頭を打ち付けてしまったらしい。


 チカチカと、一切の光が明滅する。


 やがて私の視界も、心も、人生も、何もかもが暗転したのだった。

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きらきら星は歌わない violet @violet_kk

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