特別編・ダヨさん旅立ちの朝に
今日は2024年の9月12日。今日はシュシュの一番のお友達で
みんなが大好きなダヨさんが新しい牧場に出発する大事な朝の日です。
北海道も涼しくなっていく中、秋の風も少しざわざわしている気がします。
はたして、ダヨさんはどんな朝を迎えたのでしょう、
特別にあの日を少しだけ振り返ってみましょう!
でも、お話は少しだけさかのぼって、
それは今年の七夕の日の出来事でした。
「ママ~ダヨさん、今年も短冊書くでちよ!」
くぅちゃんがみんなの分の短冊を持って来て
息子のあたる君がふしぎそうにそれを見ています。
「ママはこれはなんでチュか?」
「今日は七夕と言って、1年に1回織姫と彦星が合える日で
1つだけ願いを叶えてくれる日なのでち、あたるも書くでちよ」
「えっと~僕はママみたいな強いお馬になりたいでチュっと」
「ボクも日本一の男になって天下をとったるじゃきに」
「えっと、ぼくはずっとお兄ちゃんたちといたいぉ」
「いわおは、ホントにかわいいでち!」
そんな微笑ましいこっこ達を見て、大人たちも加わります。
「オー!ワタシも願い事書くデース、新しいゲーム機がほしいデース」
「私はこっこ達を記録する高性能カメラがほしいおす」
「あら、じゃあわたくしは舞踏会に行くための新しいドレスがほしいでしー」
「しーちゃん、若いでち!じゃあ、あたちもあたると海外に行くでち!」
大人たちのちょっと変わったお願い?と3こっこのかわいい願い事が揃い
笹の葉と一緒にさらさら揺れています。
その日の夜の事です。シュシュがふとダヨさんの願い事を見て
なにかを感じました、そこには……
「みんながずっと元気でここで過ごせますように」と書かれてあります。
昨年までは「みんなと一緒に」とダヨさんは書いていたのに、今年は少し違っていたのをシュシュは気が付いてしまったようです。
「ダヨさん、まさかもうすぐお別れでシュか?」
「シュシュにはわかってしまうダヨね」
「ダヨさんとはもう7年になるでシュから、なんとなく
わかってしまったでシュ……」
「さすがシュシュね。私、皆さんのおかげでママ業を引退して、少し早いけどのんびり過ごせる事になったダヨー。あ、でも、まだみんなには内緒ダヨ?」
「じゃあ、ダヨさんは一足早くご隠居さんでシュね。
わかったでシュ、こっこ達やくぅちゃんには黙っておきまシュね。
よかったでシュけど、寂しいでシュ……
いつも、ダヨさんが隣にいてくれたから安心できたでシュ」
「私もダヨーシュシュが水飲み場でダバーした時からずっと見ていたダヨー
最初は面白い子がいるダヨ?って思ったダヨー」
「あは、あれ見られていたでシュね。ダヨさんも私がお出かけした時は
ずっと、どこダヨーー?って心配してくれていたでシュね、帰ってきてダヨさんの
おかえりダヨーが聞こえるとホッとしたでシュ」
「聞こえていたダヨ?少し恥ずかしいダヨー」
「子育てもずっと一緒で、ダヨさんちは、少しヤンチャだけど、いつも
優しい仔だったから、うちの子がとても助けられたでシュよ」
「そうダヨか?シュシュの子も、みんないい子で可愛かったダヨー」
「ありがとでシュ、そう言われると照れまシュね……」
「本当に、シュシュありがとダヨ。寂しくなるけど、くぅちゃんや
みんなもいるから、シュシュはきっと大丈夫ダヨー」
「ダヨさんはやっぱり優しいでシュね、ありがとでシュよ」
2人の会話は夜遅くまで続いて、こっこ達の事や懐かしい思い出を語り合いました。
そんな2人を夜空の星たちだけがそっと見守ります。
そして、一つの流れ星が流れた頃にダヨさんが先に眠りに就いてしまいました。
ダヨさんの寝顔を見届けたシュシュは短冊にそっと願いを書きます。
「ダヨさんがずっと幸せでありまシュように」
それから、あっと言う間に色々あった夏は過ぎて、
9月12日の朝を迎えました。
ダヨさんは4番放牧地から懐かしい、分場に戻って
馬超さんが、おめかしと鬣を整えてくれています。
「馬超にも、たくさんお世話になったダヨ」
「なんもなんも」
言葉は少ないですが、最後に馬超さんは鼻のあたりをポンポンと
撫でてくれました。
こうして準備を終えたダヨさんは外に出ると思わずつぶやきます。
「最後にいわおとシュシュに会いたかったダヨー、でも仕方ないダヨー」
その時です、0番放牧地からシュシュやしーちゃんにイオスさん
それにいわおや他の子供達までもがダヨさんに駆け寄ってきます。
ダヨさんは思わず叫びました。
「いわお、がんばるダヨー! シュシュ元気でいい仔を産むダヨー!」
「かあちゃん~ガンバルだぉーぼくもみんなと仲良くするぉ」
ダヨさんのかわいい、今年のこっこのいわおが一番に元気に返事をしているのが
聞こえます。
そして……
「ダヨさーーん、ありがとでシュ!ダヨさんもずっと元気でー
また、いつかどこかで~きっとでシュー」
最後にシュシュの声が聞けて、ダヨさんも思わず目をウルウルさせていますね。
でも、時間が来て出発の時間になりました。ダヨさんを乗せたエバグリ号はゆっくりとたくさんの思い出がつまった分場を後にします。
こうして、ダヨさんの一つの物語は終わって、第二章が始まろうとしています。
「みんな、ホントにありがとダヨー」
いっぱいのありがとうと、新天地への希望をのせて、
みんなのダヨさんが門出を迎えました。
(ダヨさん、ありがとう!そして、ずっとお元気で!)
そんな、たくさんの声が秋の涼しい便りにのってダヨさんにも届いたのでした。
つづく
リアルダビスタ・擬人化ショートストーリー集 セイカ(ペンネーム:はすみん) @ral20102
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