(10)あたると0番の大家族
今日は2024年の9月2日。今年も暑い夏もそろそろ終わりの見えてきた北海道。
長屋の3人のこっこは、早く外に出たくてウズウズしています。
「ママとどんな遊びをしようかな?」そんな事を考えているようです。
でも、今日は毎年やってくる特別な朝の日。
こっこ達は、今日限りでママとはお別れをしなければいけません。
大人になって、立派な競走馬になる為に避けては通れない試練です。
3人のこっこは力をあわせて乗り越える事が出来るでしょうか?
今年は色々な事があって、見守れない時間もありましたね。
あの時はとても寂しかったです。
そして、私たちにとっても、ママ達とはしばしのお別れの朝になります……
そんないつもとは少し違う朝の日が始まります。
「ママ~もひもひしたいでチュ」
「いいでちよ、あたるったら甘えん坊さんでち、誰に似たんでちかね?」
「あたるはママの子でチュよ~」
「本当にかわいいでちね、あたるは」
「い、痛いでチュ、ママ~今日のもひもひは激しいでチュ」
「ご、ごめんでち、あたる元気で大きくなるでチュよ」
「ママ急にどうしたでチュか?少し目がウルウルしてまチュ?」
「だ、大丈夫でち、あたる今日もみんなと仲良くするでちよ」
「はーい、ママわかってまチュ」
こうして、なにかを察した、くぅちゃんは別れを惜しむようにあたると
最後のもひもひをして、0番放牧地に向かいました。
そして、あたる、いわお、Bくんの3人のこっこだけが放牧地の門をくぐります。
「ママ、あたるを頼んだでち」
「シュシュありがとダヨ。みんないわおたちを頼むダヨー」
「ミナサーン、オセワニナリマシタデース!イッテキマース!」
くぅちゃん、ダヨさん、てぴちゃんの3人のママ達はこっこと永遠のお別れ、
寂しいですが馬超さんたちに連れられて別の放牧地に向かいます。
「ママ~ごはんはおわったでチュよ?」
「かあちゃん、どこへいくだぉ~」
「マミー、まさか修羅の国へいかれるのか?」
置いてけぼりになってしまった3人のこっこは
慌ててママ達を呼んで探し回ります。
そんな中でもくぅちゃんが大好きなダヨさんの息子のいわおは
長屋では末っ子なので、一番動揺している様子です。
「いわお、大丈夫でチュ、ぼくのそばを離れたらダメでチュ」
「いわお、2人がいるから、安心するじゃけぇ」
「わかったお、お兄ちゃんたち……」
ひとつきほどお兄ちゃんな2人は代わる代わるいわおの側について
安心させようとしています、すっかり立派な「兄貴分」になり、いわおを守っています。
こうして、夕方になりしーちゃん園長やシュシュばぁばの
話を聞いて、3こっこは少しずつ事態を理解したようですが
暗くなるとやっぱり、末っ子のいわおは鳴いてしまいます。
こうして、あたりが真っ暗になった頃、あたるは
昨晩、ママに聞いた昔の話を思い出していました。
「この季節になると、りくを思い出すでち」
「りく?ママのお友達でチュか?」
「そうでち、いわおのお兄ちゃんでち、とても大切な友達でち
この放牧地で2人きりになったときは頼りになったでち
でも、馬房にかえるとりくのほうが泣いていたでち……」
「2人で冒険でもしたでチュか?」
「あたるにももうすぐわかる時がくるでちよ……」
「? りくくんはどんなお友達だったでチュか?」
「とても、やさしい男の子だったでち。りくにもあたるを見せたかったでち」
この後、あたるはママからりくくんと姉弟のように育った
昔話を聞きました。
そんな事を思い出したあたるは、心細くなっているいわおに
りくお兄ちゃんの話をしてあげます。
「りくにいちゃん、とてもやさしいぉ いわおもがんばるぉ!」
「そうだ、僕にもかっこいいお兄ちゃんや、
アイドルになりたいお姉ちゃんがいるんじゃき」
3人のこっこはお互いの家族の話をしていると、少しだけ寂しさを忘れられた気がしました。
そこにしーちゃんや、シュシュばあば、イオスママも加わり、いつのまにか
眠くなって、3人は眠りについて、そんな様子をお空の星たちも
やさしく見守っています。
??「みんなかわいいこっこだね、あたるくん、くぅちゃんに似てるね!」
ふとそんな声が聞こえた気がして……
こうして、3人の長い1日は終わっていきました。
それから1週間が過ぎて……
どこか、少し大人の顔立ちになった、3こっこが元気に遊んでいて
その様子を3人の保護者も微笑ましく見ています。
「はるお、お兄ちゃんがかったぉ!」
「ほんとけ?それはめでてぇじゃけぇ!」
「いわお、よかったでチュね、雷太おじさんもがんばってほしいのでチュ!」
今日はいわおのお兄ちゃんのはるおがはじめて、競争で勝ったニュースが入り
3こっこも大はしゃぎです。
そこへ……
「ここが分場ぷり?おもしろそうなとこぷり」
「あそこになかまがいるっぴ!」
3人が入り口を見ると、新しいお友達が5人もいます。
しーちゃん園長によると、転校生がやってきたみたいです。
「どうするでチュ?」
「にいちゃん、こわいぉ~」
「かちこみか~じょうとうじゃきぃ!」
今まで、ママとしーちゃん達しか見てこなかった3こっこは
尻込みしてしまっています。
さて、3人のこっこはこの新しい家族と、無事に仲良くなれるでしょうか?
今日も見守っていきましょう!
つづく
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