第5話 勤務
ところで諸君、そもそも何故私がモンスター狩りをせずこんな店で働いているのか疑問に思って来た頃だろう。
この「流星」の世界ではモンスターを一体倒した時点でRTA(敵強化)が始まる。
つまり敵を倒さなければいくらでも下積みが出来るのだ。
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ああ、意識が朦朧とする...
小さな店の割に意外と店は繁盛していた。
「おーい、こっち」「はい今すぐ!」「これ返品したいんですけど...」「はいこれは...」「これ探してるんだけど」「はい!」「これ私に似合う?」「お似合いです!」「この商品は...」「はいこれは...」
「いつでも笑顔絶やさず親切に」これが接客の時にミアから注意されたポイントだった。
これが出来なければ給料は無し、とんだブラック企業である。
・
・・
・・・
「終わった...」
ようやく昼休み、店は一旦小休止だ。
テーブルに突っ伏しながら昼食を待つ。
「どう、私のお店は?」
「良いんじゃないかな?」
店員側でなければ、の話だが。
「そう、ありがとね。
じゃあそろそろ営業再開よ! いってっらしゃーい!」
...おい待て、まだ昼飯が!
・
・・
・・・
・・・・
・・・・・
「終わった...」
居間のテーブルに座りゲッソリとした顔で呟く。
今日はまだ何も食べてない、飲んでない。
「はいじゃあ賄いよ」
パンにシチュー、そしてコンポタ。
因みにコンポタとは略ではなく正式名称である。
ミアが賄いを出すのに合わせ俺は必死で食べた。
食後。
「昼飯が出ていない件について」
「悪い子には無しです、それともまた抜かれたいのかしら?」
反論する言葉もない...、今回は俺のせいだ。
「...ほらこれ上げるから」
静かにテーブルの椅子に座っていたところ少し可哀そうだと思ったのか棒に色の着いた氷が刺さっているものを貰った。
正直言ってまんまガ〇ガ〇君である、案外俺の世界とこの世界は変な所で混ざり合ってるのかもしれない。
それにしてもコイツ、鬼畜だと思ってたが案外優しいのか?
「じゃあ明日は四時起きよ、棚卸があるから」
...やっぱり鬼畜だ、危うく洗脳されるところだった。
部屋に戻る、現在住んでいるこの建物は二階建てで一階は店舗、二階が居住スペースとなっている。
俺の部屋にあるのはまばらに本が入った棚、机、ベッドと居住するには十分な設備だ。
あとの問題は心だけ、か。
正直言って一か月も続けられる気がしない、前世でも働いてはいたがここまでの労働は無かった。
勤務日数に関しても本物のブラック企業だって基本的に毎日勤務なんていう所はそうそうないと思う。
しかし3か月の辛抱だ、3か月の...!
...長いな。
Crossing World 夜月でんぱ @yozuki_denpa
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