第4話 働けニート

俺は今、大切な仕事をしています。

日々モンスターと対峙し、そして時には涙し、歓喜するのです。


俺は今...、よろず屋をしています...。


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~3日前~


「あなた、私の家に来ない?」


「怪しい壺なんて買わないし金も無いぞ」


こういう詐欺には慣れている、中盤の街で何回むしり取られたことか。


「ち、違うわよ!、確かに家はよろず屋をやってるけど...。

でもでも違うの!、求人よ求人!」


どうやら違うようだ、だが一応警戒はしておく。

昔「一緒に洋服屋をしよ!」と言われて出した金を持ち逃げされたこともある。


「ほほう、つまり働かせてそれからむしり取ろうという訳だな」


「違うわよ!、...でも」


でも?


「その用心の高さは買った!、私のとこで働くに相応しいわ!」


「そうかそうか...ておわぁ!、ちょ、何を!」


俺の隠れたる才能を見抜いたのかミアは途端に俺を後ろ側の襟にあたる部分を持ち引きずり拉致していった。


どこぞの有名ラノベの主人公にでもなった気分だ。

しかしそのミアの態度と行動から決して詐欺ではないことが分かった。




ミアは俺を店へ連れて行こうと引っ張ってゆく。


「痛い痛..ゴホ!、やめてくれ!」


実際に引きずられてみて分かったことだがこれ凄く痛い。

道の小石はそのまま直撃するし、しかもそのままその小石は俺の体に下敷きになる訳で、全身で足ツボマットを踏んでいるような感覚だ。


そして後ろ襟の部分で引きずられているので息がしづらい...。


ああ、意識が遠のいて..ゆ..く...。


~~~~~


「さ、着いたわよ!、早く入りな..て大丈夫⁉」



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目が覚める。


「知らない、天井...?」


裏声でそう呟いてみる。

ベッドで横たわっているようだ。

確か...、そうだ、ミアによろず屋に連れていかれる途中殺されそうになって...。

ってことはここはミアの家なのか...?


しばらくするとミアが入ってきた。


「あ、起きてたのね、おはよう」


と、噂をすればやってきた。


「「おはよう」じゃねーよ!、勇者様が街で一人の少女に首を絞められて殺されるってか!、文だけ見れば俺がやべーやつみたいに思われるじゃねーかよ!」


「もしあなたが本当に勇者様ならこんな街で一文無しやってるんじゃなくモンスターを倒してお金持ちになってるんじゃないかしら?」


因ちなみに俺は基本的に女性には優しく対応している方、いや、そうせざるを得ない方だがこいつ(ミア)はもう女性として扱わないことにした、というかその性格に対してそう見えなくなってしまった。


「で、早速だけど本題に入っていいかしら?」


「求人がなんとか...って話か、ああ、是非よろしく頼む」




クロワッサン錬金術バグが使えなくなってしまった今、仕事は必須だ。

俺は姿勢を正し話を聞いた。


どうやら店員を不足しているとのことで接客と日本でいうレジ打ちを任せて欲しいらしい。

勤務は基本的に毎日、月収は3食宿付きで2000Gだ。

給料だけ見ればかなりブラックだが3食宿付きというのはかなりありがたい。

何もせずコツコツ貯めていれば3か月でフル装備+テクニック(バグ技)を使う為の材料を買えるようになるだろう。


「...それじゃあ今日はおやすみ~、あ、夜這いとかしちゃダメよ♪」

「え?」


それは夜這いに対する方ではない、いや、確かにそちらも疑問だが。

窓を見るとそこには満面の星空が広がっていた。


(もう寝れねえよ...)


そんなことを思いながら俺は30分も経たない内に寝てしまったのだった。



~翌朝~


(良く寝た...)


「おはようございます、ライン様。」


「うおびっくりした!」


メイドかよ、こいつ本当は元の世界のヤツかなんかじゃないんだろうか。


「...私に言う事あるでしょう?」


「ああ、すまない。


おはよう、ミア..「そっちじゃない!」」



「Q,今、何時でしょうか?」


「A,この世界に何時何分なんていう概念はない」



「不正解、もう十時!、大遅刻!、大遅刻よ!

早く仕事に就きなさい!」


ミアが懐中時計を見せながら言う。

針は短いやつが日本式でいう10の部分を超えた所だった。


どうやらこの世界にも時計などという忌々しい物があるらしい、しかもご丁寧に俺の世界と同じものが。ゲームではメニュー画面以外なかったのに。


「で、なんで起こさなかったんだよ」


ミアなら俺を殴ってでも起こさせるはずだ。


「そりゃあ気持ちよさそうに寝てたから、まあその対価として今日の給料はなしだから」


冷たく言われた。

こいつ、それが目的か...!


俺はその後すぐに現在唯一の楽園(ベッド)から追放され食事も取らせてもらえずに店に立たされたのだった。

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