知恵の実

えのき

1


 少年の通っている小学校で、【知恵の実】というのが少し前に話題になった。


 【知恵の実】というのは、その名の通り知恵を与えてくれる実のことだ。それを食べると、この世界の全てを知ることが出来るらしい。食べればテストで百点間違いなしだと、彼らの間では風の噂となっていた。


 だが、彼はそんなこととっくに忘れていた。なぜなら、あまり興味がなかったから。だが、それが目の前になったら、流石の彼だって驚いた。


「これが、知恵の実?」


 少し金色っぽい神々しい実。童話なんかで見るような見た目だ。彼はそれが綺麗で、まじまじと見入っていた。


 そもそも、彼は理科で習った挿し木を試しそうと枝を地面に植えただけだった。それがまさか、一日で成長してこんな実がなるなんて、思っても見なかったのだ。


「これ、もう一回植えたらどうなるんだろう?」


 彼はふと、そんな疑問を覚える。少年は早速、せっかくなった実を植えた。あらゆる知恵を手に入れることよりも、彼にとっては目前の興味が勝った。


 次の日行ってみると、そこにはなにもなかった。掘ってみると、そこには熟しきってどろどろになった実が埋まっているだけだ。


「汚いからいいや」


 少年は掘り出した実をその場に放り投げる。そして、興味を失ったのか、足早に帰っていった。


 その後、この地域で喋る小鳥が話題になった。

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知恵の実 えのき @enokinok0

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