第2話

 せいちゃんはあの人が仕事に行ってから、やっと部屋から出て、動き始めます。時々、二度寝なんかしてしまう時は、本当に困ってしまいます。あの人がおるんかどうかわからんので、襖のむこう側を覗かないかんのよ。これがいっちゃん怖い。耳っこ立てて澄ましてみても、おるんかどうかわからんくらい、音もたてんから本当に怖い。一番怖かったんが、襖のむこう側を確認しようとした時に、音がしたんよ。もう全身から冷や汗が止まらんくなって、四つん這いになりながら部屋に戻ったのを今でも引きずっとる。そん時は話してなかったけれど、ずっと抱きついてたから、おまえも何かあったとは気づいていたはずだね。まあせいちゃんには曜日感覚もないから、あの人がいつ仕事なのかも分からんし、襖は閉まっとる時もあれば、そうじゃない時もあるかん、本当に困るんですね。

 前はせいちゃんも働いとって、あの人より先に起きて仕事に行くん、そんな心配もなかったんやけれど、今はもう働いてないからね。見られたくないとか顔を合わせたくないとかそういうんじゃないけれど、合わせたら多分向き合わんといけんから、それを理解した上で、お互い避けてるんやと思う。そういう時の意思疎通は完璧なので、全く、素晴らしい気持ちになります。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

無題 びび @crnS45

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ