無題
びび
第1話
すり足とも忍び足とも少し違う、奇妙な足音。時分聞こえてくる、すこしだけ気遣ったそれだけはずっと変わらん。どうせ水流す音のほうが大きいんやから意味ないんに。もっと他に充てれるやろうと思っても、それ以外にないんやと思う。別にあの人になったわけやないけれど、そういうんはなんとなく伝わるもん。俗に言う、親子だから、というわけじゃないんよ。ただ、十何年も一緒に暮らしてみれば、誰だってそんくらいはわかるね。特段、親子だからと言ってわかるわけでもないし、それを特別なもんと思うから、何もわからんくなるんよ。お互い生きとる人間なんやからね。まあ、おまえに言ってもわからないだろうから、もういいんよ。
あの人の寝室と部屋の間の襖は木と木じゃなくなったかん、キシキシと引っかかる音はせんくなっただけ良かったけれど、問題は襖の開く音やから何も解決してないんよ。それでいえば、あの人の部屋とリビングの襖の方が閉まりきっているわけじゃないかん、よっぽどいいけんど、せいちゃんはこっちの方が好かん。冷蔵庫が置かれてるところだけを見ないように、あるいはそこから自分の部屋を見られないようにか、半分だけ閉められとる。夜中にせいちゃんが飲み物とかおべんじょ行くときに開いてたら見えちゃうもんね。
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