第7話 仕上げ

時間は少しさかのぼる

栗栖にリンからのラインが来る数日前の事…


社ハウスの住み込み管理人の募集条件について 栗栖と両親は最終調整をした。

随分 管理人に有利な条件でこれではオーナーにあまりに利益が出ないと栗栖に言われた栗栖父は


「この社ハウスは 俺と母さんの趣味みたいなモンだから、儲けは少なくていいんだよ。

 社ハウスの事を大事に思ってくれる事が第一条件。

あとは空室が出ないようにしてくれるような能力がある人だといいな」


なんだか楽しそうにそういった。


その時 栗栖は自分ほどその条件をクリアしている人は居ないと思った。


そして、

リンからのラインが届いた翌日 

流花と話し合いをする前に 栗栖は履歴書と志望動機書をオーナーである父に提出した。


「お前が 志望者一番乗りだな… うん 合格 採用。

 採用通知は後日 送付でいいか?」


「ありがとうございます。ご発送いただかなくても 取りに参ります」




**



「子供達の為にも離婚したい」という栗栖と「別れたくない」という 流花が離婚にこぎつけるには少し時間がかかった。



けれど 前回の不貞の証拠、今回の会話の録音があり 慰謝料や養育費も相場以下を請求したので 流花も諦めざるを得なかった。



管理人の契約をするのには 小川姓の方が良いだろうという事で 娘たちが幼稚園に通いだすまでの2年はそのまま過ごした。



**


「今でも 父は”用心棒”とか言って 週に一度は来るのよ ”男の影”を見せるのも必要なんだって」


栗栖はそう言って笑って 話を終えた。


その時に 食後のコーヒーが運ばれてきた。


ここは本来はコーヒーが売り物の喫茶店、豆から挽いているコーヒーは香もよく美味しい。


三人は まずは香を楽しんでから ゆっくりカップを傾ける


ソーサーにカップを戻して 栗栖が言う



「今日 初めて知ったけれど ずいぶん前から ワタシの切り札の為に動いてくれていたのね ありがとう」


そう言って頭を下げた。


角秘かくひ案件でしたからね 私たちの中では。栗栖さんに秘密にしていたのはちょっと心苦しかったんですけどね」


「ううん 流花に秘密にしていたから 上手くいったんだと思う」

「そうだね 栗栖が小川さんの鼻を明かすところ ちょっと見たかったわ」


「流花は結婚したらすぐに仕事を辞めて欲しいって言ってたの。それって、ワタシの経済的自立を阻止しようとしてたのかもしれないわね」


「ああ 経済的虐待って立派なDVの一つらしいですよ」


「妻にとって 経済的自立ってカードは必要よね」


「ワタシは困った時になって ”どうぞお使いください”って皆や親からカードを渡されたみたいなもんだけどね」


「結果オーライですよ」


「手の内は隠しておかないと ね」


「いざってときに栗栖さん ポーカーフェイス出来なさそうですよね?」


「もう!!! でも ホントに感謝しているのよ! そうだ!ケーキセット奢るわ!」


「「ごちそうさまでーす」」









ありがとうございました。

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もう時効だろうから話しちゃうね  TO BE @tobetakako

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