第6話 祝 ユノユナ一歳
「あの時 管理人の話をしなかったのは ワタシが流花に話さない為だったのよね?」
グラスを手にして栗栖が聞き 茉莉が答えた
「栗栖に話したら 小川さんに相談したでしょ? あの頃は仲良さそうだったもの」
「お父上はいざって時まで 手の内は明かしたくなかったようです」
「ワタシと流花の関係はあの時が一番よかったのかなあ?」
**
双子たちが一歳を迎えた頃…。
流花も 双子を可愛がるいいパパだった。
可愛い子供達と 優しいダンナ様 支えてくれる両親 栗栖は幸せだった。
それからしばらくして 双子たちがヨチヨチと歩き始めたころの事だ。
なかなか寝ない双子を寝かしつけながら 栗栖がウトウトしていた時に
流花からのラインが届いた
流【私の方が流花さんを愛しています リン
え? 何が起きた?
目が覚めた栗栖に 再び メッセージが届く
流【流花をちゃんと見ているのは私
流【ビックリした? 悪戯成功!?
AI 【うん びっくりしちゃった。
AI【いま ユナ達寝そうだから マナーにするね 寝てたらゴメンね
流【ごめんね 先に寝てていいよ
違う 悪戯じゃない 流花はこんな悪戯しない じゃあ 誰?
栗栖はそう思いながら とりあえず だまされたフリをすることにした
流花が間もなく帰って来たが 栗栖は寝たふりをしてやり過ごし
翌朝も いつものように―早起きの双子たちに振り回されながら―流花を送り出した
その日 実家へ行った栗栖は流花にラインを送った。
AI【今日 夕食 実家で食べよう 流花も来てね
流【今日 遅くなるけど?
AI【待ってる
その夜 遅くになって流花は栗栖の実家を訪れた。
もともと栗栖が使っていた部屋で、 栗栖と流花は畳に直接座って 向かい合った。
最初は白を切っていたが
「リンは 通勤電車が一緒だった子で 向うから声をかけてきたんだ。
僕 愛ちゃんの事が大好きだから 浮気はしていないよ
愛ちゃん 忙しいって言って 夜もすぐ寝ちゃうし 朝も忙しいし 僕の事 構ってくれないんだもん 寂しいんだよ
構ってくれない君の責任だよね?」
「はあ? 双子の赤ちゃんの面倒見るのってどんだけ大変だと思うの?流花は殆ど見てくれてないよね?ユナたちのお世話して 流花のお世話も私がするの?」
「だからさあ 愛ちゃんがユナたちのお世話してる間 僕は僕のお世話してくれる人が、リンが必要なんだってば 分かってよ!」
「それって おかしくない? それを世間では不倫とか浮気っていうのよ!」
「あ!もしかして離婚とか考えてる?」
「次は無いって言ったよね?」
「ふふふ 何言ってるの? 離婚なんて出来るわけないでしょ?生活出来ないでしょ?愛ちゃんお金ないでしょ?仕事も無いし ユナたちが小さいから仕事探せないし 僕が居なかったら物理的に生きていけないでしょ?
それに 愛ちゃんはさ パラサイト嫌いって自分で言ってたよね?性格的に甘えっぱなしとか嫌いでしょ?」
流花は勝ち誇ったようにニッコリ笑って続けた
「だから 少しくらい他の人とお付き合いしても許してよ」
ね?っと 流花は笑みを深めた
営業職としてやってきた栗栖には それなりに蓄えはある。
だが 娘二人を抱えて収入無にやっていくのは難しい。
それに 悔しい事だが 流花の言う通り 実家にただ甘えて生きていくというのも
嫌だ 精神的に苦しくなる。
「それって 貴女が今している不倫を私に認めろってことかしら?」
「不倫? うーん 不倫って言えばそうかもしれないけど 愛ちゃんがすぐに僕の方を見てくれるなら すぐに関係は清算するよ?」
「ワタシがあなたの方を見るなら 今の愛人関係は清算するのね?」
「愛ちゃんが 僕の方をみるなら、ね」
「流花 自分の愛人関係 とか 不倫 とか認めるの?」
「うん だって 愛ちゃんが悪いんだよ しょうがないじゃない?」
「認めるの?」
「しつこいなあ そうだよ 認めるよ。 でも ちゃんと家族の面倒は見るって言ってるでしょ? 僕はちゃんと家族の為に稼いでいるでしょ?不満ある?」
いつだって優しい笑みを浮かべていたはずの流花が 怖い顏をして栗栖を見る
「ねえ ワタシ お金の為だけに流花と一緒に居るのは嫌だな」
「え? 愛ちゃん?」
意表を突かれたような顔をする流花に言う
「ワタシがユノとユナの立場だったら…愛人の居る父親と それを容認する母親の子供にはなりたくない。
別れましょう。
ワタシと別れれば リンさん?は愛人じゃなくなるでしょ?恋人なのか?奥様になるのかはわからないけれど?そうしたら 流花は”愛人の居る父親”じゃ ないしワタシも”愛人の居る夫を容認する妻”じゃなくなる」
「でも どうやって 生活していくんだ?
栗栖は 流花は仕事をしていない、子育て中の栗栖には自由になるお金はない、だから離婚も出来ない そう高をくくっていた。
けれど 栗栖には切り札があった。
お金の為に流花に縋りつく必要はない。
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