第2話 「は」

晴れの日が増えてきた初夏。

なんて気を抜いていると遠くから薄暗い雲が近づいてくるものだが、今日は水平線の先から先まで雲一つ無い。


作業着の胸に刺繍されてある「空木空」の字がやや鬱陶しい。

手元のにんじんはまぶしいオレンジだし、目の前の先輩の金髪も目に刺さる。


私、空木は風吹動植物園の草食動物担当の職員として2年働いている。N’sは副業みたいなもので、それぞれ本業がある。政府から要請があった場合のみ、その能力を使用する場が与えられる。管理チップの埋め込まれた黒縁の眼鏡がそれらをすべて管理している。私がN’sということを知っているのは社長のみ。他の社員は私がN’sだということを知らないし、私も他にN’sがいることを知らない。


他の国のことは知らないが、日本のN’sは各地域ごとにチームが組まれており、力の強さでリーダー等の格付けがされている。力の強さの基準などは専門家が決めているらしいが、私が察するにそれは殺傷能力の高さだと思っている。どこまでも人間は愚かだが一般市民の私たちは従うしかない。

だがここは日本。平和の国。このまま人間相手に使うなんてことは無いままでと願う。


気が付けば、手元にはキャベツ。

「須藤さん、ウサギふれあい用のキャベツって何玉くらいですかね」

「んあ、、あー、3で」


午後イチの作業は本当に眠くなる。

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空の独り歩き 代代 @motty11

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