エピローグ

 あのね、私、なんかこの前、異世界の夢に出てきたひとに会ったんだ。

 いやジョークとかじゃなくて。

 前にも話したからいきなりでもないよね。ちょっとなにから話していいかわからなくて、私のほうが落ちつきないのかもしれないな。まあいいや、とりあえず聞いてよ。

 あー……待って。どこから話そうかな。

 いっぱいいっぱい、話したいことが、聞いてほしいことがあったんだ。だけど、うまくまとまんないや。困ったなあ。

 会うのが一番手っ取り早かっただろうな。あの場にいなかったもんね。

 すごく綺麗で強いひと。弱いと勝手に思ってたけど、そんなことなかったんだ。弱いのは私のほうだった。

 本当はね、ずっと、貴女がいなくなってから途方に暮れていた。

 だけど、そうも言ってられなくて、みんな私を励まそうとするし、でも、新しいパートナーの子とは上手くいかないし、夢を見たあとの落差に落ちこむし、大変だったんだ。

 私、全然すごくないでしょう? 貴女はいつも褒めてくれるけど、実はとてもかっこわるかったんだよ。

 あはは、でも悪いことばかりでもないね。

 私、やっとわかったんだ。あの子になにをしてあげればよかったのか。あの子たちが抱えていた気持ちも、言葉も、今まで考えたこともなかったことがいっぺんにわかって、この数か月間それについてずっと考えてた。

 ピンキーのない世界が素敵だって、前に言ったよね。

 私はあの世界で悲しい顔をいっぱい見てきたから、うんとは言えなかった。

 私もあの頃は幸せの押しつけをしてたんだ。

 なんであんな夢を見るのかって愚痴りながら、この世界の制度を愛してたんだろうね。

 でもそうじゃなかったの。違うって思ったの。悲しいことを悲しいと思えないのは悲しい。思い出せないのはすごく不幸だ。許されないとつらくてしょうがない。泣いていることを責められるのはおかしい。あの子たちの気持ちになって、思ったの。

 私はそれを知るために、あの夢を見ていたのかもしれないね。

 ……変かな? 私のことを変人扱いばかりしてたもんなあ。心配しないで、キチガイじゃないよ……いや、まあ、私一人でぶつぶつ言ってたら、そりゃあそう見えるかもしれないけど。

 うん、まあ、だから……私の愛と正義は、そうなのかなって。

 まずは泣いているひとを、慰めることから始めてみようと思う。

 やっぱりちょっとおかしい? イカレてる? なに言ってるのかわからない? 心配しないで。大丈夫。現実的な話だよ。

 ……ああ、もう時間だ。


 じゃあ、いってくる。

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