終章

無数の小さな泡が私の周りを泳いでいる。


薄れゆく意識の中、水面越しに見えた空の青が何かを映し出している。


君が、其処にいる。


――これは、夢なのだろうか。


傷だらけのギターを抱えながら、優しい眼差しで私を見つめている君の口が開く。


「ミラレソシミ」


私は思わず息を呑んだ。


その言葉、その響きは――。


そして私に語りかけるその声は、ゆっくりとあの懐かしい声に変わっていった。


そうか、君は――。


気泡を抜けて差し込んだ、皺の寄った大きな両手が、私を包み込んだ。


――これが、夢であっても。


そして私は深く、深く、青に溶けていった。

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青が呼ぶ 水谷駿 @shun_mizutani

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