命を救うということ。それが医療の最終目標であるとすれば、「どんなことをしても」と医師や研究者たちは思うのかもしれない。勿論、親も子も親族皆、「助かるのであれば、どんなことをしても」と思っている。
けれど、「どんなことをしても」いいわけではない。人間として、超えてはならない一線。倫理を取るか、欲求を取るか。研究者は悩む。
悩み、立ち止まり、それは「追究すべきことではない」と冷静になる研究者たちの傍らで、「私情」が絡んでくると、その事情は変わってくるのかもしれない。
それは「間違っている」ことで、「あってはならない」ことで、「許されない」こと。
そんな、怖い世界のお話ですが、沢山考えさせられることがあります。
最初、専門用語だらけで難しすぎて、これは読み切れないと思っていたのですが、読んでいくうちに、どんどん惹き込まれ、気がつけば読破してしまっていました。
読後、それぞれの人の心の中に残る感覚。それもまた、大変興味深いところです。
主人公は医療系の研究所に所属し、日夜研究に励んでいた。そこには優秀な研究員が顔をそろえ、切磋琢磨し、病気と闘っている。目指すは人間の不治の病の克服。各々が各分野のエキスパートだ。
そんな研究づくめの日々の中、主人公はある研究員のバーベキューに参加する。その研究員はその筋の研究員としては名が知られた優秀な研究員だった。バーベキューに若い美人な奥さんと、目に入れても痛くない愛娘。そして愛犬も参加し、開放的な時間を過ごす。
しかしその後、研究室で異変は起こる。研究室の奥に鍵のかかった別の部屋が作られ、監視カメラも付かないと言う。そして、その部屋に不用意に足を踏み入れた主人公の「土産友達」の研究員が——。
主人公も突如隣に出来た研究室が気になる。しかし、入ってはいけないと言われている。一体その研究室で何が行われていたのか?
医学系、細胞学系の知識が沢山出て来ますが、文系でも読みやすいと思います。研究員同士のやり取りや、学会発表など、リアルなやり取りがあって、新しい世界を見たように感じます。その分、最後は衝撃的でした。
是非、御一読下さい。