第43話 その活動って何? それと、連…それ、大丈夫なのか?
昨日の夜。街中で晴希と同学年の女の子が、知らない男性と歩いていると、ツインテールの子が口にしていた。
そのツインテールの子は、今日の通学路を歩いていても出会うことはなかったのだ。
もしかしたら、殆ど登校していないのかもしれない。
だから、基本的に彼女とは出会わないのだろう。
彼女は普段、何をしているのか不明であり、怪しい感じがしてならなかった。
そんなことを思いつつ、倉持晴希は、学校の校門を通り過ぎ、昇降口に向かう。
いつも通りの朝の学校の風景――
けど、どこかが違う。
その違いは、校舎の昇降口に足を踏み入れたところらへんで感じたのである。
異変が生じていると、晴希はそのオーラを雰囲気的に察していたのだ。
なんだろ……。
晴希は、不安な心境で中履きに履き替えた後、一階の廊下を歩き始めた。
廊下にいる人らが何かについてやり取りをしている。
何とか活動とか、聞き取りづらかったものの、周りにいる人らは、そんな話をしていたのだ。
活動とは、委員会か、部活動のことなのだろうか?
定かではなく、断定はできない。
モヤモヤしたまま、廊下の端のところに集まり、会話している人らに対し、耳を傾けていたのだ。
けど、晴希は立ち止まることはしなかった。
変に立ち止まると、初対面の人から変に見られてしまうことがあるからだ。
ツインテールの子からも変な目で見られ、軽蔑されたのである。
それに、周りにいる人らと晴希はそこまで接点がなく、親しいわけではない。だから、そこまで話を聞きだすことはできなかった。
一体、活動って……。
階段を上り、二階の教室へと晴希は足を踏み入れた。
教室の雰囲気は暗かったのだ。
誰かの悪口を話すような感じに、教室にいる数人の女子が一緒の席に集まり、小声でやりとりを行っていた。
嫌な感じの印象しかない。
晴希は一旦、自分の席に座り、スマホを操作しつつ、様子を伺うように、チラチラと教室内を見渡していたのだ。
こっそりと聞き耳を立てていると、自分のことではないと察した。
不思議とホッとしたのだ。
胸を撫でおろす。
晴希は他人から変な目で見られることが多い。
だから、多少、ヒヤヒヤしていた。
ただ、よくよく耳を澄ましてみると、パパ活とか、そんな言葉が聞こえてきたのだ。
先ほどの廊下で聞こえた活動とは、パパ活だったのだと直感的に思った。
パパ活――
その言葉からすぐに思いつくこととして、黒木日葵の件である。
昨日、四階の空き教室内。昼休み、日葵が自称仲間の彼女らに、パパ活をやれと強要されていたのだ。
もしかしたら、その件かもしれない。
晴希はそう思ったのだ。
そんなことを一人で考え、嫌な気分に陥っていた時、晴希はふと、気配を感じた。
そこには、友人の高屋敷漣が佇んでいたのだ。
彼は、どこか悩ましい顔をしていた。
今、漣がいつも関わっている仲間らは、教室にはいないらしい。
話し相手がいなかったから、接触を図ってきたのだろうか?
それとも、別の理由が……?
もしや……日葵のパパ活の件だろうか?
晴希は変な意味合いで、胸の心臓の鼓動が早くなりつつあった。
「なあ、ちょっと話いいか?」
漣からの問いかけ。意味ありげな話口調だった。
晴希は一応頷き、手に持っていたスマホを裏返すように机に置いたのだ。そして、彼の方へ、体の正面を向けたのである。
「ここだとよくないしさ、別のところで」
「別のところ?」
「ああ」
漣は一言だけ口にし、ただ頷くと、彼は教室内をあっさりと見渡していたのだ。
辺りにいる一部のクラスメイトは、漣の方を見てニヤニヤしていた。
今日はやけに、嫌な感じだ。
やはり、パパ活といえば、日葵のことしか考えられない。
そのことについて、一部のクラスの女子らは、連を見、こっそりと嘲笑っているのだろう。
晴希は手に持っていたスマホを制服のポケットにしまい、席から立ち上がる。そして、漣と共に、教室を後にするのだった。
「話って言うのは? なに?」
「それはさ。昨日、日葵の件で話したじゃんか」
「うん」
晴希は相槌を打った。
二人は今、校舎の裏庭のベンチに腰掛け、1メートルほどの距離感でやり取りをしていたのだ。
右隣にいる連の表情は暗かった。いつものような覇気すらも感じなかったのだ。
「それで、日葵に聞いたんだけど。答えてくれなくてさ」
「そうなの?」
「……それでさ。なんで話さなかったのか、今日の朝やったとわかったんだ」
連は死んだ目を見せつつ、心には感情がなくなったかのように、淡々とした口調で話を進めていた。
連は今まで穂乃果と付き合っているのに、日葵とも付き合っていたのである。
友人だから助けてあげたい気持ちもあるのだが、晴希は、心の中では、しょうがないのかなと思っていたのだ。
「今日の朝?」
そんなことを思いつつ、晴希は、同情するような顔を見せ、連に問う。
「ああ……今日の朝、学校で日葵がようやく話してくれたんだ。パパ活をしてるって」
「……」
晴希はわかっていた。
だから、無言になってしまう。
でも、なぜ、そんなことを付き合っている連に言わなかったのだろうか?
日葵は、晴希に対しても酷く罵声を浴びせてきたのである。
だから、たとえ、恋人のような関係性である連にも、打ち明けることはしなかったのだろう。
日葵は晴希に対しては、純粋に恥ずかしいという感情で罵ったのだと思った。ただ、連に関しては恥ずかしさではなく、迷惑をかけたくなかったから、相談しなかったのだろう。
刹那、晴希の心臓の鼓動がさらに加速する。
日葵の件については、漣に隠していることがあるからだ。
「……漣は、どうして、朝、そんなことを聞こうと思ったの?」
晴希は気分を変えるために、思い切って話題を変えるように話した。
「今日さ、学校に登校した時さ、周りにいる奴が、日葵のことを話題に、パパ活の話をしてたんだ。それで、そこで話していた奴に聞いたんだけど、答えてくれなくて。だからさ、そのことについて、日葵に聞くことにしたんだ」
「それで、やってたって言ったの?」
「ああ……」
漣はショックそうな顔を見せていた。
悲しそうな表情。
漣の友人らしく、晴希は何かを話そうと思ったのだが、心苦しくて何も言い出せなくなったのだ。
「それと、日葵との関係性がなぜか他の人らにバレたんだ」
「え?」
晴希はドキッとした。
「誰かが、俺と日葵の関係性を捏造して、広げた奴がいると思うんだ……パパ活の件もそうだが、俺と日葵はヤバいことに巻き込まれるかもな。もしかしたら――」
そして、連は何かを言った。
けど、晴希からしたら、衝撃的過ぎて、何も言えなくなったのだ。
酷いフラれ方をした僕は、学校一の美少女である、友人の恋人と付き合うことにした。 譲羽唯月 @UitukiSiranui
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