王道ハイファンタジーに和を取り入れ、ダークに味付けした作品です。昨今のファンタジー小説とは対極にあるような硬派な作風ですが、個性あふれる登場人物や緩急のある物語のおかげで親しみやすくもあります。特に登場人物のやり取りに関してはダークな物語を中和するような微笑ましいやり取りもあるので、割と万人受けする内容になっているのではと思います。
そして、物語の鍵となる様々な要素。それらは和の息吹を感じさせ、売り文句の通りに和洋折衷の雰囲気を醸し出しています。世界観も丁寧に構築されており、エセ日本のようになっていない点も嬉しい部分。最初は世界観に馴染むのに苦手意識があるかもしれませんが、序盤で基本を押さえてくれるので躓くこともないでしょう。
面白いのに、流行り路線でないために過小評価されている作品と見受けられたので、これを読んで本作に興味を持った方は是非とも読んでみてください。ハイファンタジーの旨味をそのままに、たしかな筆力で表現される独創的な世界。気づけば、虜になっていること間違いなしの一作です。