絶望の中に降りてきた皆殺しの天使

 人生に追い詰められた成人男性の声ならぬ慟哭と、そこに差した一筋の光明のお話。

 わずか1,000文字強、でもとてもシリアス(?)な現代ドラマです。
 どうせならネタバレなしで読んだ方が楽しいお話だと思うのですけれど、でも何か語ろうとするとどうしてもネタバレになってしまうので、未読の方はぜひとも先に本編を。



〈 この先ネタバレ注意! 〉

 落差というかなんというか、中盤の転調の破壊力が凄まじい。
 それまでの丁寧な助走、胸をギシギシ軋ませるかのような苦くて重たい独白の凄みが、でも一瞬で木っ端微塵にされちゃうこの無常感。

 このお話を端的に、ただ事実として設定や構造を抜き出すのであれば、
「人生に疲れ果てた成人男性の元に、急に女子高生が発生する(そして彼に救済をもたらす)」
 という形には違いなく、にもかかわらず彼女のキャラクター性がそれにまったくそぐわないところ。

 本当に感動したというか、あくまで彼女は彼女自身の人生を生きて、つまり都合のいい存在では決してない——だけならともかく、〝にもかかわらず、それでも彼に福音をもたらすである〟ところがもう最高に大好き!

 別に皮肉めいたところも何かを腐すようなところもなく、ただただしっかり前向きに進んで、そのまま綺麗に着地して終わってくれる。
 最高でした。
 こんなに短いのにちゃんと物語していて、胸を打つ確かな強さがある。
 コメディといえばそれは確かにそうなんですけど、だからこそ一本通った〝小さなシリアスさ〟が光る作品でした。