もう前には進めないと決めつけて目隠ししていたのはいつも自分だった
- ★★★ Excellent!!!
カクヨム甲子園2022 ロングストーリー部門
奨励賞おめでとうございます。
地に足がついているような現代ドラマ。
今を生きる、大人になりきれていない高校生の思いや生き様が、ありありと描かれている。
脚色や誇張されていないような、天然色の青春作品。
本作は、凡人である高校生の主人公が、多くの高校生の声を代弁するかのように考えや思いを主張しているところがすごい。
飾らず、カッコつけず、だらしないところもみっともない姿も、お馬鹿なとこまでさらけ出している。
遥香は、子供らしく過ごす園児や小学生時代を、勉強ばかりして過ごしてきたかもしれない。
だから、十八歳の大人になってしまう前に千恵にSOSを打ち明けたのだ。
まだ互いをよくしらない関係だったから、素直に言えたのだろう。
子供とは、見ず知らずの子同士でも仲良く遊べるものだから。
「彼女の海になりたい」と決意し、遥香の誕生日に実行するまで、およそ四カ月かかっている。
四カ月も、遥香は千恵の誘いをずっと待っていたのだろう。
実に健気で良い子である。
六月に一緒に過ごした時間が、本当に楽しかったに違いない。
最高のプレゼントである。